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第232話 これからのこと

 「――これからのこと」


 野尻先輩が深刻そうな声で言う。

 今まで聞いたことないくらい、深刻そうだった。


 『これから』か……。

 部員不足の理由で廃部とか?


 野尻先輩の声のトーン的にそれならうなずける。


 そう予想できたけど、俺は敢えて先にそれを言わないで、野尻先輩の言葉を待った。


 「わかるでしょ? これからのこと」

 「……この……タイミングなんですね……」

 「うん、このタイミング」


 いつもは笑顔を浮かべている言音も、今は笑みを浮かべてない。

 翔琉はいつも通り無表情。


 俺はこいつの笑顔、見れるのかな?


 野尻先輩は部屋の奥にある引き出しから紙を数枚出す。


 廃部についての書類かもしれない。


 そう思うと心が重くなる。


 野尻先輩は真っ直ぐ俺に向かってきた。


 そして紙を差し出してきた。


 俺はお礼を言うのも忘れてそれを受け取って、その紙を見る。

 紙は数枚重なってる。


 この紙――原稿用しにはなにも書いてなかった。


 やっぱりそうか、この部の――って、え?

 なんで原稿用紙? しかも400字の。

 いや、基本的に400字か。


 じゃなくて、なんで原稿用紙?


 「あの、これ……なんですか……?」

 「原稿用紙」

 「それは見ればわかりますよ。なんで原稿用紙……?」

 「感想文だよ!」


 とうとう野尻先輩が叫ぶ。

 『いつか叫ぶだろうなー』って思ってたけど、予想外の形で叫ぶ。


 「ほら、うちら行事管理部じゃん? で、この球技大会は新しくつくった学校行事! つまり、最初の行事ってこと! それがどんな形で生徒に評判だったか記録残さなきゃいけないの!」

 「え、もしかして話って……これだけ?」

 「これ『だけ』ぇ!? めちゃくちゃ大変じゃん! 原稿用紙3000字の感想文だよ!? こんなつらいの経験したことないよ!」


 野尻先輩……よっぽど感想文書くの嫌いなんだな……。


 「ってか、生徒の評判なら生徒にアンケート取った方がいいんじゃないですか? 俺たち部員が感想文なんかを書くより」

 「私もそう思ってるよ! でもこのやり方が行事管理部の伝統なんだよ!」


 この部活に伝統なんてあったんだ。

 そういうのまったくなさそうな部活なのに。


 「俺……戻っていいですか?」

 「うん、もういいよ」

 「あ、木神先輩先に行っててください! 私も後から行くので!」


 俺は軽く頭だけ下げて部室から出る。


 野尻先輩、感想文であんなになるんだ。


 感想文3000字なんて――


 ――って、3000字!?

 感想文で!?


 多すぎやしませんかね!?


 なんとなく野尻先輩が絶望してた理由がわかった気がする。

 今度は俺が絶望する番か……。

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