第231話 部室まで
全力疾走で部室まで行く。
バスケしたときより疲れた。
それでも最後まで頑張った。
めちゃくちゃ息を切らしながら部室のドアを開ける。
中には野尻先輩と翔琉、それと言音がいた。
「あ、きがあま遅い! なにしてたの!」
「す……すみ……ま……せん……」
酸素が必要……。
「木神先輩、さては走ってきましたね〜? 廊下は走っちゃダメですよ?」
「う……うる……さい……な……。こっちは……マジで……」
「ちょっ、大丈夫? 水分摂りな?」
「あ、いいのあります!」
言音が部室の奥のほうまで行って、隅に置いてある謎の四角い箱に近づく。
その箱、ちょっと大きい。
『なにするんだろう』って思ってたら、言音はその箱を開ける。
そう、まるで冷蔵庫みたいに。
中にはペットボトルとか缶ジュースがいっぱい入ってる。
言音はその中から缶のコーラを出して、その箱を閉める。
「これ、冷えてますよ!」
いや、あれ冷蔵庫なんかい。
今まで謎に思ってたけど、あれ冷蔵庫だったんかい。
なんでこんなとこに冷蔵庫あるの?
……ヤバい、疲れすぎてていつものテンションになれない。
言音はそのコーラを差し出したから、とりあえずお礼を言って受け取った。
「……これ飲んでいいやつ?」
「そんな毒なんてありませんよ! それに、1週間前に買ったものですよ、それ」
「いやそういうことじゃなくて。勝手に飲んで大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
言音の代わりに野尻先輩が答える。
「一応うちの部活予算で買ってるものだし。……ま、その部活予算の半分が顧問の寄付みたいなもんだけど」
ええ……。
そもそもここに冷蔵庫大丈夫なのか?
電気代とか大丈夫?
「飲みな? 疲れてるんでしょ?」
「いや、でも……」
「飲まないんなら翔琉が今やってるホラーゲームのラスト、ネタバレするよ」
「なに?」
やっと翔琉が反応してくれた。
ってか、その脅し、俺はノーダメじゃない?
「ほらほら、早くしないと口が勝手に――」
「ちょっ、待ってくれ」
翔琉が椅子から降りて、俺に土下座する。
「飲んでください、お願いします」
そんな嫌?
まぁ、仕方ないか。
「い、いただきます……」
俺は気まずい中、コーラを飲む。
うん、普通に美味しい。
「美味しい?」
「はい」
「ならよかった」
「……で、なんで俺、呼ばれたんですかね……?」
俺の質問に野尻先輩は目をそらして、翔琉と言音は俺の目を凝視した。
……なにこの状況。
「今日はね、とっても大事な話があるのよ……」
と、とっても大事な話……!
この感じ、結構真剣なやつだ。
覚悟して聞かなきゃな……。