第229話 バレた
「なぁ、すごかったんだよ!? 俺が!?」
「うるさい。声量考えろ」
結局戻ったところには、もう試合は終わってた。
結果は総一郎たちの勝ちらしい。
抜けたこと、バレないかなーって思ってたけどバレた。
意外と観察力あるのかも、総一郎。
「俺、ゴールに5回も入れたんだよ!」
「そのうち4回はオウンゴールだけどな」
俺と総一郎の間に柚斗が入る。
総一郎も柚斗も汗まみれだった。
ってか、5回中4回オウンゴールって……。
俺ですらそんな失敗しないよ?
だって俺、そもそもボールに触れることはないから。
「うるさいぞ! あれが俺の全力だったんだ!」
「綺麗なオウンゴールだったな。『これでも喰らえ! 必殺、演劇部蹴り!』ってカッコよく言ってシュートしたもんな」
……ダサ……。
ってか、シュートに名前つけんな。
スポコン漫画じゃないんだから。
「……ま、みんな笑顔になったしそれでいいんじゃね? 俺はお笑いキャラでいいんだよ」
総一郎が真顔になって言う。
改めて確認するけど、近くには俺と柚斗しかいない。
だよね、総一郎。
俺、お前のそういうところが好きだから友達になったんだよ。
『こいつら、本当に友達か?』って思われてもおかしくないくらい、俺は総一郎に酷いこと言うし、酷いことする。
『ま、こいつならいっか』とか考えて、総一郎のこと放っておいたり。
そうすることで、総一郎が満足するから。
『なぁ、天太』
今でも覚えてる。
去年、不登校だった俺の家にまでわざわざ来てくれた総一郎。
『もしさ、お前がまた学校に来れるようになったらのときのために、話があるんだ』
『やっぱさ、楽しいのが一番じゃん?』
『なのにみんな暗い顔してさ。最近人生観嘆いた歌――ってか、そういう感じの歌流行してるじゃん? それに、高校生になってみんなネットやり始めたから、社会の理不尽さとか知ったやつが続出して』
『別に人の考え方を否定するわけじゃないけどさ、俺、そういうのあんまりよくないと思うんだよね』
『だから、天太、お前に協力してほしいんだ』
『俺を使って、みんなを一瞬でも笑わせるために』
「――天太?」
総一郎の声で我に返る。
「どうした? 俺の顔見てニヤニヤして」
「え、ニヤニヤしてた? 俺」
「ああ、めちゃくちゃキモかった」
キモ……!
ちょっと落ち込みそう。
総一郎を見てニヤニヤしてた俺も悪いけど。
「あ、俺の顔に見とれてた? イケメンすぎて」
「それはないから安心しろ」
「はぁ? 俺くらいイケメンのやつ、他にいないぞ!?」
「はいはい。ま、勝ったならおめでどな」
「ってかノドかわいたなー。柚斗、食堂でなんか冷たいもの買お」
「そうだな」
二人はそう言って食堂に向かう。
それにしても、4回もオウンゴールするってすごいな。
わざとじゃないんでしょ?
……って、4回もオウンゴールしたのに勝ったの!?