第228話 認識
「違う! それは違う!」
教室の中に入ってくる湊亜。
「湊亜……。お前……」
「天太くんは自分のこと、間違って認識してるよ!」
「そういうの……お前が一番言っちゃいけないんだぞ……? 俺はお前が受けた苦痛と同じものを、他人に与えたんだぞ……?」
「それでも天太くんはあの人たちとは違う! ちゃんといじめは悪いことだってわかってるし、私ののことも助けてくれた! 似たような質問するけど、天太くんはいじめられたことあるの……? 自分の意思じゃなくて、やられたくないのにいじめられたことはあるの?」
『自分の意思じゃなくて』。
それは違う。
俺は自分の意思で、いじめ――っていうか嫌われるようにした。
でも湊亜たちは違うんだ。
湊亜も燕沙も、自分の意思じゃない。
そういう面では、俺とこいつらは全然違う。
「……悪かった、二人とも。ごめん」
やっと言葉が出た。
ここまで素直に謝れたのは自分でもびっくりしてる。
「……ちょっとバカになってた。目、覚ませてくれてありがと」
「天太……」
「やっぱあの話になると自分見えなくなるな。この悪い癖、治しとく」
「天太くん……、もう大丈夫……?」
「ああ。じゃ、早く総一郎んとこ行くぞ。どうせあとで感想訊かれるし。ちゃんとしたもの言わなきゃ怒られちゃうからな」
俺は笑って二人にそう言う。
湊亜はすぐに笑顔になったけど、咲羅は笑顔になるのに少し時間がかかった。
しかも、作り笑い感がすごい。
俺たちはすぐに教室から出た。
今思ったけど、教室に残っててもよかったな、テレビ中継あるし。
外行って寒い思いするより教室にいるほうが絶対いい。
……でもさっき、『暑い』って思わなかったっけ? 俺。
それよりこの行事終わったらもう3学期終わったもんだよね?
変な行事とかもうないし。
今日はもう疲れたな。
帰ったらミミに癒してもらうか――
「――って、ああー!」
急に叫んじゃった。
だってさ、最近ミミと遊んでないもん!
昔は毎日遊んでたのに最近サボってた!
ミミ、俺のこと忘れてないかな……?
「ど、どうしたの!?」
咲羅がめちゃくちゃびっくりしてる顔してる。
湊亜も同じだ。
「最近ミミと遊んでない! ヤバいって! ネコネコ癒しパワー足りてない!」
「…………」
? 二人とも黙っちゃった。
そう思うと、二人とも同時に笑い出した。
……なんで?