第222話 バスケ 〜3〜
あれから頑張ってみたけど、今はギリギリ負けてる。
でも褒めてほしいよね、こんな強いやつらと戦って『ギリギリ負けてる』で済んでるんだから。
それより疲れた。
あと何分で終わるの? 試合。
もう体力が限界を迎えてるんですけど。
だからってここまで来たらもうやり切るしかない。
しかもみんな見てるし。
とりあえず、いつでもボールを受け取れるような位置にいよう。
もし俺にボールが来たら、パスできそうなやつにパスする。
今はモヒカンがボール持ってる。
「木神!」
モヒカンが叫ぶ。
よし、俺にボールが来るんだな。
そう思ってた意識を集中させたけど、モヒカンは俺とは全然違う方向にボールを投げる。
それはゴールの方向だった。
……あいつ、ゴールのことを俺だと思ってるのかな?
あとで教えてあげよ、『あれはゴールって言うんだよ』って。
ゴールとモヒカンの距離が遠すぎて、もちろん入るわけがない。
ボールは床につくと同時に、笛が鳴った。
「終了ー!」
審判の声が聞こえる。
やっと終わった……。
俺たちは一列に並んで、敵と向かい合う。
『ありがとうございました』って言ってから、みんな散らばる。
俺も咲羅たちのところに行った。
「お疲れ様です! 木神先輩、大活躍でしたね!」
紙コップを俺に差し出しながら言う言音。
中にちょっと濁ってる液体が入ってる。
多分スポーツドリンク。
そう信じたい。
俺はお礼を言ってからそれを飲む。
うん、スポーツドリンクだ。
「すごかったですよ! 最初のやつとかびっくりしました! あの距離で入れるなんて、さすが天太さん!」
興奮気味に言う実璃だけど、あれは奇跡的に入ったやつだよ?
なんか言いづらくなっちゃったよ。
「ま、ドリブルはなかなか面白かったけどな。……あ、動画撮ってるぞ」
「そういえば江島くん、動画撮ってたね」
スポーツしてる俺を撮るな。
恥ずかしすぎるわ。
総一郎が俺にスマホの画面を見せてくるから、それを見てみる。
床に思いっきりボール打ちつけて、そのまま跳ね返ってきて顔面に思いっきり当たってる俺の動画だった。
地味に総一郎の笑い声が聞こえる。
こうして見るとマヌケだな……自分のことだけど。
それと、総一郎の笑い声もムカつく。
「それより、次は湊亜さんの卓球だ! 天太、行くぞ!」
「はいはい」
タオルで汗を拭いながら返事する。
湊亜の卓球は見てみたい。
頑張ってほしいな、俺の分。