第22話 名取と一緒に帰る
「木神天太さん!」
放課後、学校から出ようとしたら例のやつの声がする。
あの名取とかいう女子生徒だ。
ちみに今、俺の近くに咲羅と実璃はいない。
なんか『予定ある』とか言って、走っていった。
独りで帰るのは慣れたけど……こいつと帰るのは嫌だな……。
「一緒に帰りましょうよ!」
「……嫌だと言ったらどうする?」
「……言うんですか? 『嫌だ』と」
「言いたいけど、言えないみたいだ」
俺は辺りを見渡す。
生徒たちが俺たちを見て、コソコソしてる。
名取の称号は本当にあるみたいだ。
『100回告白された』ってやつ。
めちゃくちゃモテるらしい。
「じゃあ一緒に帰りましょう」
名取はニヤリと笑い、俺の頬に手を当てる。
そして撫で始めた。
俺はその手を握る。
「気持ち悪いからそれはやめろ」
「酷い言い方ですね。もっと喜んだらいいのでは? 女の子にほっぺを触ってもらえるのですよ?」
「悪いけど、俺はそういうのじゃ喜べないんだよ」
俺は名取を無視して歩き始めた。
名取は笑いながら俺についてくる。
「――木神天太さん」
突然話しかけてくる名取。
今人通りが少ないところを歩いている。
「女の子の身体に興味はありませんか?」
「……興味ねぇよ」
「嘘ですよね? 男の子ならみんな好きだと思うんですけど」
「さぁな。俺はみんなと違うんだよ」
「……私のスカートの中、見ていいですよ」
「たとえ俺が女の身体に興味があったとしても、お前のだけはゴメンだ」
俺は黙って歩くことしにた。
名取は俺についてくる。
「女の子にその言い方は酷くないですか?」
「悪いな、俺はそういうところに気をつけられない男なんだ」
「そうなんですか……。陰キャで嫌われ者はみんなそうなんでしょうね……」
「…………」
言い返す言葉が思いつかなかったから、俺は何も言い返さない。
それを見た名取は再び感じの悪い笑みを浮かべ、俺の前まで走った。
そして俺の前に来た瞬間に止まり、俺に顔を向けた。
「いつまでそういうことをするのですか?」
名取が訊いてくる。
いつまでって……。
「いつまで……か……。質問の意味がわからねぇな。俺は特に何もして――」
俺が言いかけているとき、名取が急に声を出して笑いだした。
俺は黙ってそれを見ていた。
「何を勘違いしているんですか!? バカみたいですね! 自意識過剰すぎますよ! 木神天太さんには話しかけてませんよ!」
なに……?
「アナタたちに話しかけているんですよ! 白糸さん、鶴崎さん!」
咲羅……?
俺は振り向く。
すると、そこには咲羅と実璃がいた。
……なんかバトル系漫画みたい……。