第216話 球技大会、種目決め
「今日は球技大会の種目決めまーす」
教室に先生が入ってくると同時にそう言う。
今は『LHR』っていう、クラスのこととか決める時間。
これで『ロングホームルーム』っていうらしい。
ってか、種目決めって……。
「じゃ、体育委員さん、お願いします」
「はーい」
眠そうに誰かがそう言って、黒板の前に出る。
……なんて名前だったっけ、この男子生徒。
「じゃ、順番に種目言っていきまーす」
黒板とかに書かないんだね。
メモしとかなきゃ。
「バスケ、サッカー、バレー、卓球、ドッジボールの5つに分かれてて、男女それぞれ5人でーす」
全部苦手だ。
ヤバい、笑えないよ。
「それぞれもっと詳しいこととかわかんないの? ゲーム時間とか」
誰かが質問する。
確かにゲーム時間とかは気になる。
「あっと……。木神に訊けばわかるんじゃない?」
……は?
「これ企画したのも行事管理部だし。木神、確か行事管理部だったよね?」
いやいやいや、知らないんだけど!?
え、なに? 球技大会って行事つくったの行事管理部なの!?
俺、そんなの決めた覚えないよ!?
俺のいないところで決めたの!?
「え、木神くん、行儀管理部だったの?」
隣に座ってる女子生徒が話しかけてくる。
みんなに言ってなかったっけ? 俺が行事管理部だってこと。
じゃあなんであの体育委員は俺が行事管理部ってこと知ってるの?
「まぁ、一応……」
「へー、すごいね!」
なにが?
ただ先輩や後輩――っていっても、話すのは言音だけで、翔琉とはあんまり話さないけど――と雑談するだけだよ?
「で、何分間なの?」
「えっと……。ごめん、わかんない」
「そっか……」
いや、俺悪いの?
「まぁ、忘れちゃうときもあるもね」
忘れてるんじゃなくて、そもそも知らないんだよ。
「それより、早く種目決めてくださーい」
そうだ、今種目決めの時間だ。
どうしよっかな、マジで。
どれも苦手だし。
でも一番できそうなのはドッジボールなんだよな。
ずっと外野いればいいし。
よし、ドッジボールに立候補するか。
「じゃ、先に人気そうなやつから決めていきまーす。男子でドッジボールがいい人ー?」
よし、挙手するか。
手を挙げて、教室を見渡す。
……? あれ? 誰もいなくない?
挙手してない人が。
みんなドッジボールがいいの?
嘘でしょ?
「はい、じゃあじゃんけんしまーす。俺に勝った人だけ残ってくださーい」
体育委員が腕を出す。
じゃんけんか……。
いや、勝てばいいんだよ。
勝てばいいだけなんだ――。