第210話 咲羅の夕飯
咲羅は『ちょっと準備してくる』って言って部屋から出て行ってから1時間くらい経った。
とても居づらい。
まず咲羅がどこに行ってなにを準備してるのかわからないし、さっきの紙も怖すぎる。
だってちっちゃい字がいっぱい書いてあったんだよ?
しかも咲羅、すぐにそれ破いたし。
絶対呪文だよね、あれ。
俺を呪ってるのかな?
俺、なんか呪われるようなことしたかな……?
『インドア陰キャのくせに調子乗ってる』とか?
うん、絶対そうだ。
よし、咲羅にすぐに謝るか。
謝れば咲羅も許してくれるかもしれない。
けどその肝心の咲羅がどこにいるのかわからない。
他人の家だから勝手に動いちゃダメだし。
前回、咲羅の家に泊まったときはこんなことなかったのにな……。
……あれ? なかった……よね?
ヤバい、もう覚えてない。
「――天太、準備できた」
やっと咲羅が現れてくれた。
……こういう表現良くないかな?
うん、一応表現変えとこう。
やっと咲羅が俺の前に出た。
……これもヤバいかな?
ま、いっか。
それより、なんの準備ができたの?
「お腹、空いてるでしょ?」
「まぁ……多少は」
「じゃ、来て」
咲羅はそれだけ言ってまたどっかに行く。
あの感じからして、多分夕飯とかつくってくれたんだと思う。
今が夕飯の時間かと言われればなんとも言えないけど。
俺にとっては早めの夕飯。
とにかく早く行こう。
俺もすぐに部屋から出て、咲羅を追いかける。
そしたらリビングまで来た。
机にはいっぱい料理が並んでる。
米、味噌汁、肉じゃが、大根とカニカマとサラダ……かな?
めちゃくちゃ美味そう。
「一緒に食べよ」
「え……いいの……?」
「夕飯なしじゃダメでしょ」
ダメかな……?
たまに夕飯なしにするときあるけどね、俺だけ。
なんせ昼の弁当の量が化け物クラスですからね。
「……あ、もしかしてもっと多いほうがよかった……?」
「え?」
「いつもたくさんお弁当食べてるもんね……」
無理して食べてるだけです。
「いや、全然そんなことない。これくらいが嬉しいくらい」
「……ならよかった……。じゃ、食べよ」
うん、食べたい。
咲羅が座ったから俺も咲羅の反対側に座る。
そこに色々と用意されてたし。
「いただきます」
いつもより丁寧に言ってから箸を取る。
先に味噌汁から飲んでみよう。
意外と味噌汁好きだし。
「……!」
「……どう……?」
「めちゃくちゃ美味い! いや、マジで美味い!」
自分でもびっくりするくらいの声量で言う。
だって本当に美味しいんだもん。
母さんとか姉ちゃんがつくるやつより美味い。
「……そっか。いっぱいつくったからいっぱい食べてね」
咲羅がちょっと笑って箸を取る。
咲羅のつくってくれた弁当は何回も食べたことあるけど、やっぱこういうのは全然違うね。
マジで母さんと姉ちゃんのつくってくれたやつより美味しい。
※『〇〇がつくったのより美味しい!』などの発言は、TPOを考えてからにしましょう。
TPOの意味がわからない人へ……『とってもプリチーな折りたたみ傘』の略です!(嘘です。本当は『時と場所と場合』です)