第21話 結婚を前提にお付き合い
『結婚を前提にお付き合い』……!
いや、普通に嫌だよ!
「さ、返事をお願いします」
いやいや、なんでこんなやつと付き合わなきゃいけないの?
「嫌だって、あんたと付き合うの。さっさとどっか行きな?」
咲羅が俺の表情を見て、俺の代わりに名取に言う。
実璃はウエハースみたいなやつ――録音機だっけ? まぁ、それを握りしめながら動かない。
「今私はあなたに質問していませんよ? 白糸さん。少し自意識過剰すぎではありませんか?」
「あんたに言われたくないよ。さっき自分のこと『学校一告白された数か多い』みたいな感じに言ってたし」
「あれは実際にある称号を語っただけです。事実を述べて何が悪いのですか?」
なにこの状況……。
二人とも俺をまもってくれてるけど、俺は何もやってない……。
なにか言おうとしても、なにを言えばいいのかわからない……。
あんまり人と関わらないからすぐに言葉が出ない……。
インドア……陰キャ……。
「……もう行こ」
咲羅は俺の腕を掴んで、歩き出す。
俺も歩いた。
名取が俺を睨んでくる。
「はい、これ。返します」
実璃が録音機を名取のスカートのポケットに入れる。
名取は『ありがとうございます』と笑顔で言っていたが、本気で笑っているようには思えなかった。
「……なんで俺のポケットに録音機が仕掛けられたってわかったんだ?」
教室に帰る途中、俺は実璃に訊いた。
実璃は話しかけられた瞬間ビクッと身体を震わせて、俺に顔を向けた。
「あの女子生徒って天太さんの後ろから話しかけましたよね?」
「まぁ……そうだな……」
「天太さんに話しかける前に、天太さんのポケットに入れていたんです。それが怪しくて、敢えてそのままにしていたんです」
え、わかってたの……?
俺のポケットに入れられてたこと。
その場で言わないんだ……。
ってか『怪しいから敢えてそのままにしておいた』って言ったよね?
実璃、なんかスパイとかやってそうだな……。
「それより、あいつ本当に何がしたいんだろうね」
俺に顔を向けないまま喋りだす。
あいつって名取のことか……。
「『結婚を前提に付き合え』って言ってたけど、本当にそう思ってるかわからないんだよね」
「はい……。絶対なにか企んでますよね……」
え、なに?
キミたちめっちゃ考えてない?
探偵なの?
「とりあえず天太、あいつには気をつけて」
気をつけてって言われてもな……。
何もできないし……。
……でも確かに……あの名取とかいう女子生徒はヤバい感じがする……。
……なんでだ……?
あのときと同じだ……。
※咲羅と実璃は一般的な女子高生です。