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第207話 地獄のおみくじ

 「みんなでさ、おみくじ引こうよ!」


 なんか姉ちゃんのヤバい声が聞こえる。

 うん、気のせいだ、俺の聞き間違いだ。


 「今年の運勢知りたいじゃん!」


 知りたくないです。


 「あ、楽しそうですね! 天太さんもやりますか?」


 やりません、絶対に。


 「天太がやるなら私もやる」

 「じゃあ私もやろっかな?」

 「湊亜さんがやるならやる!」

 「おおー! 先輩たちの運勢も知りたいです! 翔琉もやるでしょ!?」

 「……オイラも自分の運勢には興味ある」

 「みんながやるなら俺もやる」


 なんでみんなやるの!?

 これで俺だけやらなかったら、俺が空気読めないみたいな感じになっちゃうじゃん!


 「だってさ、みんなやるって。天太、やるよね? お姉ちゃん命令で」

 「……マジで?」

 「天太さん、おみくじ嫌いなんですか?」

 「らしいねー。だって毎年必ずだいき――」

 「姉ちゃん!」


 姉ちゃんの声を遮って叫ぶ。

 ダメだ、バレたくない。

 毎年必ず大凶だなんて、恥ずかしすぎる。


 「えー、なにー? 言われたくないことでもあるのかなー?」


 うわ、めちゃムカつく。

 でも言われたくないことがあるのは本当なんだよな……。


 「わ、わかった! おみくじ引く!」

 「おー、さすが天太! そういうツンデレなとこ好きだよ!」


 なに言ってるんだ、この人は。


 俺はみんなとしぶしぶおみくじ引くところまで行った。

 俺は最後に引こう。

 まずはみんなのやつを見てからだ。


 ……おみくじ引いてるシーンは地味だったから説明しないね。

 結果だけ言うね。


 咲羅が中吉。

 実璃が大吉。

 湊亜が中吉。

 言音が凶。

 姉ちゃんも凶。

 総一朗が末吉。

 柚斗が吉。

 翔琉も吉。


 ……男子だけ反応に困るな。

 あと言音と姉ちゃんは半泣きで『うわーん、凶だー!』って言ってるし。

 大凶じゃないだけましだよ。


 で、次は俺と。

 今のところ大凶は出てないし、大丈夫だろ。


 目を閉じて箱の中身に手を突っ込んで、そこからおみくじを引く。


 えーっと、なになに……?


 ……! 大吉だ!


 「お! 天太大吉おめでと! 人生初めてじゃない?」

 「ああ、初めて!」


 ヤバい、嬉しすぎる!

 俺の反応が大げさだからかわからないけど、みんな俺のおみくじを見てる。


 いや、おみくじはここからが大事なんだ。


 健康、『病になる』。

 金、『財布落とす』。

 恋愛、『諦めよ』。

 旅行、『事故に遭う』。

 学問、『零』。

 運動、『ビリ』。

 願事、『希望は捨てよ』。

 商売、『借金する』。

 道徳、『皆無』。


 ……スゥー……。


 まず一つね、なんかおみくじっぽく書かれてないよね?

 おみくじで『ビリ』なんて単語使う?

 しかもなに、道徳『皆無』って!


 それにさ、これ――


 「これ大凶じゃない?」


 俺の代わりに姉ちゃんが言う。


 そうだよ! これ大凶だよね! 内容的に!

 大吉って書いてあるじゃん!


 「印刷ミスかな?」


 えぇ!?

 おみくじに印刷ミスなんてあるの!?


 しかもさ、一回希望を持たせてから一気に絶望に向かわせるのひどくない!?


 あー、もう決めた!

 おみくじなんて二度とやらない!

大凶って本当にあるんですかね? 見たことないので実際に見てみたい気持ちはあります。……凶は何回も出たことありますけど……。

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