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第203話 温泉から帰宅

 「疲れたねー、天太」


 家に帰った瞬間に姉ちゃんが言う。

 あのあとすぐに総一郎に家まで送ってもらった。


 「俺も疲れたよ、吐こうとするのに」

 「ああ、飲泉専用のとこあったのに普通のとこで飲んだやつ?」


 そう。

 でもさ、吐こうとしたんだよ、総一郎と一緒に。


 だけどでなかったんだよね。

 吐けなかったんだよ。


 思いっきり吐こうとしたのに出なかった。


 「弟ながらバカなことするなって思ったよ」

 「俺のせいじゃない、柚斗のせいだ」

 「なんで?」

 「今は話したくない」


 柚斗があそこで『飲め』なんて言わなければ飲まなかったのに。

 ま、一番の被害者は総一郎か。

 俺は総一郎と比べればあんまり飲んでないから別にいっか。

 無害だよ、無害。


 「お母さんも仕事だし、二人きりだねー」

 「そうだね」

 「二人でなにする?」


 なにするって……。

 別になんもしないよ。

 姉ちゃんとすることなんて思いつかないし。


 「せっかくの二人きりだよ? みんなの前じゃできないことしようよ」

 「なんだよその言い方。弟に言うことじゃないだろ」

 「いいじゃん、二人でなんかしようよ」


 普通にボーッとしたいよ、自分の部屋で。


 「総一朗くんのことについて語る?」


 それだけは嫌だ。

 今日のあいつ地味にかっこよかったからムカつく。


 あ、でもなんで湊亜の前でああいうふうにしないのかは気になる。


 「それとさ、話題変わるんだけど、マンションと一軒家、どっちが好き?」

 「本当に話題変わるな」

 「えへへ。ってかさ、もうちょっとでお正月じゃん? みんなで初詣で行こうよ。みんなって咲羅ちゃんたちのことね?」


 それは楽しそうだな。

 初詣で、ここ数年行ってなかったし。


 なんで行かなくなったかっていうのは、別に面倒くさいからとかじゃない。

 話してあげるよ、俺の初詣でエピソードを。


 ある日ね――まぁ、1月1日だけど、その日に初詣で行ったの、母さんと姉ちゃんと。

 最初はさ、普通ににお参りしたの。

 問題はそのあとだよ。


 おみくじで大凶が出たんだよ。

 おみくじって『大凶』あるの?

 『凶』が最低じゃないの?


 しかもさ、それが5年くらい連続なんだよ。

 5年ずっと大凶。

 しかもさ、神様の一言に『初の日に自ら災いの場に足を入れている』って書いてあったの。


 『初の日』って初詣でだよね?

 でさ、1月1日っていつも初詣でのための神社以外、どこにも行かないんだよね。

 つまり神社が『災いの場』ってことだよね?


 これって『初詣で来るな』ってことだよね?

 だから行ってない。


 「オッケー、咲羅ちゃんたちの連絡先私持ってないから天太誘っといてー」


 姉ちゃんはそう言って奥の方へと行く。

 マジで行くのか、初詣で。

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