第199話 サウナで勝負
「じゃ、一番長くいれたやつが優勝者ね。で、最初に出てったやつが優勝者に牛乳奢り。2番目の人は優勝者に10円ガム奢りでいっか」
柚斗の提案に総一朗がうなずく。
別に10円ガムはいらないな……。
牛乳は嬉しいけど。
ってか、総一朗本当にこの勝負やるの?
のぼせてる総一朗が圧倒的に不利だけど。
「じゃ、入るぞ」
柚斗がサウナへの扉を開ける。
まだ熱気は伝わってこない。
けど中に入った瞬間に熱気が一気に来た。
さ、少なくとも10分は耐えたいな。
俺も牛乳奢ってほしいし、本気だそ。
3人並んで座った。
その中で俺が真ん中で、右には総一朗、左には柚斗がいる。
まだみんな余裕そう。
総一朗が余裕そうってすごいな。
確かにこいつ、根性だけはすごいもんな。
「サウナなんて久しぶりに入ったな」
柚斗が喋る。
声も余裕そうだった。
「何年ぶりくらい?」
「3年とか?」
「結構前だな」
「木神は?」
「俺は1年とかかな? 久しぶりのサウナも意外と気持ちいいな」
「…………」
総一朗はさっきから無言だけど大丈夫かな?
ダメそうだったら無理やり外に出すか、命に関わるし。
「……まだ余裕か?」
「俺は。でも総一朗は無理そうだけど」
「じゃ、さっさと脱落してもらうか」
柚斗は立ち上がって、中央にあるサウナストーンのところまで行く。
ロウリュか……。
ロウリュやってことないんだよね。
結構すごいらしいけど、どういうふうなんだろ……。
柚斗は慣れた手つきでサウナストーンに水をかける。
その瞬間、『シュー……』って音が響いて水蒸気が出た。
この音、意外といいな。
でも熱くなったのかな?
柚斗も戻ってきたし、訊いてみよ。
「これってさ、暑くなるの?」
「いや、気温自体は変わんない」
……は?
じゃあなんでロウリュなんかするの?
ただの観賞用?
「じゃあなんであんなことするの?」
「水蒸気が出ることで湿度が上がるだろ? そうすることで体感温度が上がるんだ」
へー、そうなんだ。
意外と詳しいな、柚斗。
サウナとか好きなのかな?
言われてみれば、確かに体感温度上がった気がする。
……今何分くらい経ったんだろ……。
さっきから無言でいるから、もう10分くらい経ったよな?
総一朗、意外と頑張ってる。
さっきから動いてないけど、死んでないかな?
でも俺も人の心配するほど大丈夫じゃない。
さっき温泉飲んで吐き気があったせいか、結構限界かも。
3位は嫌だ、せめて2位だ。
もうちょっと頑張ろ……。