第198話 温泉、飲んでみた
俺は勇気を出して手にすくった水を飲んでみた。
ちょっとだけとろみがあって、ちょっとだけしょっぱい。
「うわ……、どうだ? 味」
「んん、なんか身体によさそうな味してる。ってか、最初の『うわ』ってなんだよ」
でも全然飲めないことはない。
意外といける。
「じゃあ俺も飲んでみる……!」
気だるそうな声で総一郎がいって、水面に口をつけてがぶがぶ飲んでる。
手ですくって飲めよ……。
「……江島、俺が悪かった」
「? どういうこと……?」
「あとで牛乳奢ってやる」
「なんで……?」
「本当にごめん」
なんでさっきから柚斗は謝ってるの?
待って、嫌な予感がしてきた。
俺は一旦露天風呂から出て、周辺をちょっと歩いてみた。
そして見つけた。
『飲泉専用』って看板がある、ちょっと小さめの井戸みたいなやつが。
そこには温泉が入ってるみたいで、井戸の隣には『飲泉の効果』って書いてある看板もある。
そしてその看板には『ここ以外の温泉を飲まないでください』って書いてある。
……飲泉……専用……、ここ以外の温泉は飲めない……?
ここでしか……温泉飲めない……?
じゃあさっきまで俺たちが入ってた温泉は……?
一気に吐き気がきた。
マジで吐きたい。
柚斗が謝ってた理由がやっとわかった。
それより、これを総一郎に見せちゃダメだ。
ただでさえ今も具合悪いのに、ここを見せたら総一郎はさらに具合が悪くなるに決まってる。
「天太……どうした……?」
後から声がする。
ゾンビみたいな足取りで総一郎がこっちに向かってきていた。
ヤバい、見せちゃダメだ!
「な、なんでもない! さっきのとこ戻ろう!」
「なんか奥あるじゃん……水風呂……?」
本当にヤバい!
……! こういうときこそ演技力だ!
「な、なんでもないよー! ほ、本当になんもなかったんだー!」
「ってことはなんかあるのか……」
なんでバレた!?
総一郎、なんか能力使ってる!?
「ち、違う! なんもないんだ!」
「気になるな……!」
「江島! なんもないんだ! さっさと戻ろう!」
総一郎を後ろから抱きつく柚斗。
こんなに必死になってる柚斗、見たことない。
「さ、サウナ行こう! 誰が長く入れるかで勝負だ! 負けたやつは牛乳もう1本奢り!」
「それならやりたい……!」
やっと総一郎が俺に背中を見せてくれた。
マジで今日ナイスすぎる、柚斗。
※禁止されていたり、特に許可がない場合、皆が浸かる温泉をがぶ飲みしないようにしましょう。天太みたいに少し手にすくって飲むことは大丈夫だと思いますが、総一朗のようにがぶ飲みすると、他人に変な目で見られ、温泉の効果で具合が悪くなるかもしれないのでやめておきましょう。(あくまで予想です、こうならないかもしれません。それと、『は? 温泉ってがぶ飲みしていいんだよ?』というルール(?)があったら教えていただけると嬉しいです。……あ、これ実体験じゃありませんよ!?)