第197話 露天風呂へ
今温泉に入ってからだいたい30分くらい経った。
姉ちゃんは2時間とか当たり前の人だから、あと1時間半くらいは出てこないと思う。
ま、今日は咲羅たちがいるからそんな長居しないと思うけど。
……いや、咲羅たちも2時間くらい入る人かもしれない。
ちなみに総一朗はそろそろ限界みたい。
さっきまで元気に喋ってたのに、今はなんも喋ってない。
まだ露天風呂にも行ってないのに、もうのぼせたのか……?
「総一朗、大丈夫? 一旦出て休む?」
「あー、そうする……かも……」
「かもってなんだよ……」
「そういう天太は大丈夫なのかよ……? 柚斗もだけど……」
「俺は昔から姉ちゃんと母さんのおかげで耐性があるからな、あと1時間半は大丈夫」
「俺も温泉とか好きだからな、全然大丈夫だ。じゃあ木神、露天風呂行くか?」
「あー、そろそろ行きたいな。じゃ、総一朗はどっかで休んできな?」
「いや、俺も外に行く……。涼しいとこに行きたい……」
確かに、涼しいところのほうがいいかもな。
俺たちは一斉に温泉から出て、露天風呂に向かった。
総一朗はふらふらしながら歩いてる。
本当に無理そうだったら総一朗だけでも出させるか。
柚斗が先頭になって露天風呂への扉を開ける。
その瞬間に冷たい空気が一気に入ってくる。
結構寒い。
早く温泉入りたい。
でも総一朗は快感を得ているような顔をしる。
一瞬こいつが苦痛を感じて喜ぶ性癖かと思ったけど、多分のぼせてたからこういうのも涼しく感じるんだろうな。
「……江島、なんか気持ちよさそうだな」
「総一朗なんかほっといて早く入ろ? 寒い」
「同感」
俺と柚斗は早足で歩く。
露天風呂は結構広くて、海が見えて景色が綺麗。
脚から温泉に浸かる。
気温のせいもあると思うけど、ちょっとぬるめ。
でもしばらく入ってたらあったかく感じそう。
「ここの温泉、結構いいな」
突然柚斗が喋る。
こいつがこういう感想言うって珍しくない?
俺も温泉をよく感じてみたけど、確かに普通なやつとちょっと違う。
ぬめりがある。
「そういえば木神、温泉って飲む?」
「……は?」
「だから、『温泉を飲むか?』って訊いてるの」
「いやいや、飲むわけないじゃん! 今俺たちが浸かってるやつでしょ!? 知らないおっちゃんとかも裸で入ってるやつだよ!?」
「そんな言われるとは心外だな。結構飲む人いるんだぞ? 温泉」
え、そうなの?
ヤバい、めちゃくちゃに言っちゃった。
ごめんなさい、本当はそんなこと思ってません。
「飲んだことないのか?」
「まぁ、ないな……」
「飲んでみな? ここのは飲めるみたいだし」
「……わかった」
俺は勇気を出して温泉を飲むことにした。
奇跡的に今日は定休日で、知らないおっちゃんもいない。
俺は手で温泉をすくった。
どんな味するんだろ……。