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第191話 灰色の海へ

 「……総一朗、ここ……人気なんだよな……?」

 「らしいぞ?」


 全体的に灰色の景色を見ながら訊く。

 曇ってるから空は灰色、海も灰色、砂も灰色。

 そのうえ俺たち以外に人はいない。


 車の乗り心地は最高だった。

 それで『意外と海も快適かも』とか思ってたらここに連れてこられた。


 湊亜たちも合流して、みんなで海を眺めてる。


 「マジで泳ぐの……?」

 「当たり前だろ! 泳ぐぞ!」


 総一朗はそう言って急に服を脱ぎだす。

 下着代わりに水着着てたみたいで、あっという間に海パン姿になった。


 「天太は水着にならないのか?」

 「いや、泳げないし……」

 「お前泳げないの? なっさけないなぁ。10メートルくらいは泳げるだろ?」

 「そういう意味じゃなくて……」

 「向こうのちっちゃい建物が更衣室だからそこで着替えてくれば?」


 着替えたくないよ……。

 めちゃくちゃ寒いもん。

 こんなときに海パンになったらヤバいって。

 凍死するぞ。


 「なら行くよ、天太!」


 姉ちゃんがなぜか笑顔で言う。

 そして俺の腕を掴んで更衣室向かって走り出した。


 姉ちゃんがマジでおかしくなった……。


 「せっかく海に来たんだから泳がなきゃ!」

 「風引引くぞ……?」

 「いいの!」


 よくないよ。

 風邪引いたら苦しいよ?


 振り向いたら言音も更衣室に向かって走ってるみたいだし……。


 「先輩が泳ぐなら私も泳ぎます! 一緒に水中デートしましょう!」


 なんだよ、水中デートって。


 わけがわからないまま走ってた――ってか、走らされてたら咲羅も走ってくる。


 「私も天太と水中デート……ってか、天太がそうしたいと思ってるからそうする!」


 そんなこと思ってません。

 水中デートなんて溺死するぞ。


 「着いたよ! 早く着替えるよ!」


 え、もう着いたの?

 やだ、まだ凍死したくない!


 「荷物持ってるよね? うん、なら着替えてきな?」

 「嫌だよ、寒いし」

 「一人で着替えられない? なら脱がせてあげるよ! はい、ばんざーい!」

 「やめろ、恥ずかしい」

 「咲羅ちゃんたちも着替えると思うよ? 天太一人だけ着替えないの? 一人だけ普段着だったら目立っちゃうよ?」

 「それは嫌だ」

 「でしょ? なら着替えて?」


 いや、でも……。


 そう思って姉ちゃんの目を見る。

 そしたらなぜか知らないけど泣きそうな目をしてる。


 ……これ俺のせい?

 俺が悪いの?

 俺が着替えないから姉ちゃん泣かせちゃった?


 うう……、着替えたくないのに……。


 ……ええい、もうわかった!

 風邪引く覚悟で着替えてやる!


 全部総一朗のせいだからな!

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