第19話 夜中デート?
「おいおい! 天太!」
ったく……、うっせぇな……。
いつも通り学校にいたら総一朗が叫ぶ。
「お前! 昨日夜中、デートしたらしいな!」
「はぁ? デート?」
「ああ! 鶴崎と!」
誰だよ……鶴崎って……。
「目撃者がいるんだぞ! 二人でコンビニから出ていくところを!」
コンビニ……?
……ああ、わかった。
鶴崎って実璃のことか。
あいつの名字、『鶴崎』って言うんだ。
「しかも二人とも楽しそうに笑ってたって情報もあるんだぞ!」
……本当に何言ってんだ……、こいつ……。
確かに実璃は笑ってるように見えたけど、俺は笑った覚えはないよ……?
「ほら、証拠写真!」
総一朗はポケットからスマホを出し、画面を俺に見せる。
そこには美味そうにアイスを食ってる実璃と、それを見て微笑んでる俺がいた。
……確かに笑ってるように見えるな……これは……。
ってか俺、実璃を見て微笑んでたのか……。
女子高生眺めて笑うって……、そうとうヤバいやつなのかな……?
「なあ、どうなんだ!? デートしたんだろ!」
「逆になんでお前がその写真持ってるんだよ……。まさかお前が盗撮したわけじゃないよな?」
「俺じゃない! 田中がやった!」
田中って確か……学年1のエロ男のと言われてるやつか……。
よく盗撮する気になったな……。
「もう学年の全員がこのこと知ってるんだぞ! もう手遅れだからな!」
総一朗はなぜか涙を流してどこかへ行った。
学年の全員が知ってるって……、まさか……、咲羅も……?
それって結構ヤバいやつだよな……?
なんか言及されそう……。
「天太、おはよう!」
早速本人が来た。
俺の隣に弁当箱を持った咲羅がいた。
……でも表情はいつも通りだ。
ってことはあの写真のこと、知らないのか……?
「あ、天太さん! おはようございます!」
今度は実璃の声。
咲羅の後ろに、弁当箱を持っている実璃。
今日も弁当二つコースか……。
美味いからいいけど。
「木神くん! お弁当つくってきたよ!」
……え……?
「私もつくってきた!」
……はい?
気づいたら俺の周りに数人の女子が集まってきていた。
全員弁当箱を持っている。
そしてこのとき思い出した。
『今日は母さんが弁当をつくってくれた』ということに。
つまり……。
……今日の昼飯……、残すかも……。
えっと……何人いるんだ……?
……咲羅と実璃を合わせて8人……。
で、母さんの弁当もいれるから9人分……。
さすがに全部は食えないって……。