第189話 今日は海へ!
12月23日。
終業式の日から数日しか経ってない。
それなのに、今日海に行くことになった。
本音を言うと、マジで行きたくない。
だって寒くない?
本当は家に引き籠もりたいのにな……。
でも姉ちゃんはなぜか知らないけどめっちゃ嬉しそう。
今朝の第一声が『今日海だね!』だったし。
母さんも母さんだよ。
『こんな寒い日に海なんかやめなさい!』とか言ってほしいじゃん?
なのに『へー、楽しそうだね。お土産期待しとくね』だよ?
母さんは今日は仕事か……。
もし仕事じゃなかったら家でゴロゴロしてるんだよね?
羨ましい……。
「天太? なんでそんなに元気ないの? 具合悪い?」
リビングで、風邪を引く覚悟をしてたら水着姿の姉ちゃんが話しかけてくる。
なんで今水着……?
あと言っちゃ失礼だけど、姉ちゃんってこんな胸あったっけ?
もっと小さいと思ってた。
「あ、わかった、落ち込んでたんでしょ? 『今日海行きたくないな』って」
「うん、めっちゃ行きたくない」
「そんなこと言わないで、みんなも行くんだから行こうよ! 咲羅ちゃんとか実璃ちゃんの水着見れるよ?」
「総一郎じゃないんだし……。それと姉ちゃん、言いたいことあるんだけど」
「ん? なに?」
「そんな胸あったんだ。もっとちっちゃいかと思ってた」
「ぶん殴られたいの?」
「そんなわけないだろ。ってか、なんで今その格好してんの?」
「こっちのほうがいいでしょ?」
「……俺の友達に、江島総一朗っていうやつがいるんだけど、そいつ、めちゃくちゃ女の身体に興味あるんだよね、多分。で、姉ちゃんが肌を露出しまくると、そいつ姉ちゃんの身体ジロジロ見ると思うんだよね」
「……じゃあやめとく」
姉ちゃんはしぶしぶ服を着る。
うん、いい判断だ。
そういえば湊亜も心配だな……。
総一朗、完全に湊亜の身体目的で海に行きそうだし。
俺は湊亜から離れないでおくか。
そろそろ時間かな?
姉ちゃんが着替え終わったら家から出るか――
「おーい、あーまたー!」
外からなんかマヌケな声が聞こえる。
この声、総一朗だ。
俺は『近所迷惑だな』って思いながら玄関まで言ってドアを開ける。
そしたらあらびっくり。
目の前に高級そうなでっかくて黒い車が2台もあるじゃないですか。
その助手席の窓から総一朗が顔を出してる。
「よ!」
「……は?」
「迎えに来たぜ!」
「いやいや! なにこの超高級そうな車!? お前、盗みはダメだぞ!」
「失礼だな。これはうちの車」
「……とうとう妄想が激しくなったんだな……」
「違う! 父さんの車!」
……は?
お父様の車?
待って、どういうこと?