第188話 姉ちゃん、海行く?
結局俺も海に行くことになった……らしい。
総一朗曰く、俺は強制だって。
俺がいないほうが総一朗もハーレム楽しめるのに、なんで俺なんか誘うんだろ……。
それと、もう絶対に行く感じになっちゃったから今から姉ちゃん誘わなきゃいけない。
正直、心の片隅で『これは冗談』って思ってたのに……。
だってね……、海だよ?
俺は山のほうが好きだけどな……。
山といっても登らないよ?
だって俺体力ないし、ただ景色楽しむだけ。
『この山綺麗だなー』って。
今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
姉ちゃん誘わなきゃ。
「姉ちゃん、今いい?」
リビングでスマホ見て爆笑してる姉ちゃんに声をかける。
姉ちゃんは俺が声かけた瞬間に真顔に戻った。
え、なに、怖いんだけど。
俺が話しかけたのそんなに面白くない?
『今楽しかったのにお前のせいで楽しくなくなったよ』って言ってる?
「んー? どうした?」
呑気な声で言う姉ちゃん。
この感じからすると、あんまり迷惑がられてないらしい。
よかったよ……、実の姉にまで嫌われたら俺の存在理由わからなくなっちまうからな。
「冬休み空いてる?」
「私は基本的にいつでも大丈夫だよ?」
「……大学大丈夫なの?」
「なんとかなる!」
なんとかなるもんじゃないでしょ……。
単位取り忘れたら留年でしょ?
「で、冬休みがどうしたの?」
「みんなで海行くことになったんだけど、来てくれない?」
「……ごめん、聞き間違えた。海に行くって聞こえちゃったよ。どこに行くって?」
「海」
「えええぇぇぇ!?」
うるさいな……。
そんなに驚く?
いや、まぁ驚くか。
「今冬だよ!?」
「そうだな、でも冬に海行く人もいるよ?」
「それはそうだけど! マジで海行くの?」
「ああ」
「……企画したの天太?」
「いや、総一郎」
「ああ、総一郎くんか……。ならしょうがないね」
しょうがないんだ。
確かにあいつは誰にも止められないもんな。
よく言うと『自分のしたいことを貫き通してる』、悪く言えば『他人のこと考えてないバカ』。
ま、それが総一郎の良いところだ。
「で、行く?」
「なんか絶対に行かなきゃいけない感じだよね……? それなら行くよ」
「了解、みんなに言っとく」
「お願い。じゃ、私はその日のためにエネルギー蓄えておくよ」
姉ちゃんはそう言って冷蔵庫の前まで行く。
そして中からプリンを出した。
よし、みんなにメールしとくか。
俺もその日のためにエネルギー蓄えるか。
まずは昼寝だな。
勉強なんかやめて寝よ。