第187話 冬休みどこ行く?
今日は終業式だった。
わかってる人もいると思うけど、成績も返された。
赤点はないんだよ。
でも低くて50点代、高くて80点代。
これは……いいのかな……?
なんか普通だよね。
ま、赤点がないだけまだいっか。
80点代はとれたし。
姉ちゃんに自慢しよ。
で、今みんなで帰ってる。
これから冬休みだし、もうしばらく学校に行かなくていいのか。
家に引き籠もれる……。
ま、きっと姉ちゃんにどっか無理矢理連れて行かれるんだと思うけど。
「みんな……ってか、湊亜さんって冬休みに予定ある?」
「私? いまのところまだなにもないけど……」
「じゃあさ、海行こうよ!」
……どうしよう、総一朗がとうとう頭おかしくなった。
いや、頭おかしいのはいつもだけど、さらにヤバくなってる。
だって今冬だよ?
このクソ寒いのに海行くの?
……あ、別に海に入るわけでもないのか。
景色楽しむ的な?
「みんなで海入ったら楽しそうだよな!」
……ああ、本当にアホだった。
いや、そんなこと言っちゃいけないな、冬に海行く人も結構いるんだし。
でもその人たちって本当に海楽しんだりするんだよね?
総一朗のことだから、どうせ湊亜の水着みたいからとかいう理由じゃないの?
そんな理由で海に連れて行かれる湊亜、可愛そ……。
「? 天太くん、私の顔になんかついてる? じっと見てるけど」
「あ、いや、かわいそうだなって……」
「? なにが?」
「なんでもない」
このことは知らないほうが幸せだよな、きっと。
そういえば夏休みに海とか行かなかったな。
なんでだろう。
……あ、思い出した。
俺がいきなりそういうところに行くと刺激が強すぎてぶっ倒れる可能性あるからやめてくれたんだ。
それで確か水族館になったんだよね。
水族館のイルカショーだけはもう観たくない。
「江島、なんで冬に海?」
「だって面白そうじゃん!」
「でもそれで――」
「考えてみてよ、咲羅さん。水着の姿の天太が海で濡れる。いつもとは違う感じの髪型になって、そこから水滴が……」
「行こう、ってか、天太を連れて行こう」
んー、咲羅?
なんで? しかも言い方おかしくない?
『連れて行こう』って言われたよ?
「……あ、それと天太の姉ちゃん! その人も誘おう!」
「なんで姉ちゃんが出てくるんだよ……」
「だって水着姿を見た……、そっちのほうが楽しそうじゃん!」
「江島先輩……、口滑ってますよ……」
「いいの!」
よくねぇよ。
「みんな行くね? うん、行くよね? じゃあ父さんにそう言っちゃうよ?」
どうぞ。
お父上にちゃんと予定を伝えるなんて素敵ですね。
俺はそういうことできませんよ。
だってもし父さんに言ったら『え? 海? 女の子いる? じゃあ行く! カメラも持って行くな! 女の子撮る用の!』とか言われそう。
ま、海か……。
一応楽しみだな、うん。