第180話 咲羅と公園へ 〜3〜
ま、まぁ、今は咲羅の親のことなんていいんだ。
せっかく学校サボってここまで来たんだから景色見て楽しも。
そういえば咲羅の親とは会ったことないな。
咲羅の家に泊まりに行ったときは親いなかったもんな。
……いや、あったっけ?
咲羅の家にプリント持っていったとき会ったっけ?
「ねぇ、一つ質問いい?」
だいぶ落ち着いてきた咲羅が言う。
「今日さ、親に学校休むって言った?」
「ミミに言った」
「……ミミ?」
「ネコ」
「……それって意味ある?」
「ないな」
「じゃあ意味ないじゃん!」
おー、咲羅がまた元気になった。
あとこのツッコミ好きだな。
なんか言い方がすんごい良い。
それと『意味ないよ』って言って『じゃあ意味ないじゃん!』って、当たり前のことだけどなんかすごいな。
「そういう咲羅は言ったのか?」
「言ってない」
「なんで?」
「言ったらしつこく訊かれるもん」
「へー」
「無駄に厳しいから。門限とかもきっちり守れって言われてるし、部活帰りだとしても夜一人で帰るなって。本当、意味わかんない」
あー、わかった、咲羅は反抗期なんだ。
俺はあんまりそういうのなかったな。
「女子高生なら夜遅くなることもあるし、彼氏とかできたらどうすんだって話だよね」
「確かに、恋人の家に泊まることとかあるかもしれないな」
「でしょ? だから昨日口論しまくったよ。彼氏できたからって」
「え、できたの? おめでと」
「……数分前までの記憶ある?」
え、数分前?
うん、あるよ?
そんなすぐに忘れないって。
咲羅、俺のことをなめすぎだよ?
笑っちまうよ、ここまで来ると。
「天太だよ? 彼氏」
「……へ?」
「さっきもそう言ったじゃん」
「えええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉」
「そんな驚く⁉」
「驚くだろ!」
「……マジで数分前の記憶ある?」
「あるに決まってる――? ん? あ、さっき言ってたな」
ヤベ、さっきまでの記憶全部なくなってたわ。
テヘペロ。
「……やっぱ面白いね」
声色を変えて咲羅が静かに言う。
咲羅の顔を見ると、微笑んでた。
……ヤバい、かわいいと思ってしまってる自分がいる。
顔赤くなってないかな……?
「一緒にいて楽しいよ、やっぱ」
「……そっか……」
「じゃあ改めて。恥ずかしいし勇気出すんだから、ちゃんと聞いてよね」
咲羅は表情を変えないまま俺を見つめる。
「私ね――」
咲羅がそこまで言ったときだった。
なんかすっごい大きい音が聞こえた。
銃声かな?
それレベルでうるさい。
そして残念なことに、咲羅がなんか言ってるときとちょうどタイミングが被った。
でもなんであんな大きい音が――。
「逃げろ! 拳銃持ったやつがいるぞ!」
遠くでおじさんの声が聞こえる。
はー、拳銃ねー……。
……って、拳銃⁉️
ってことは、さっきのマジの銃声⁉️
ちょっ、逃げなきゃヤバいじゃん!
「咲羅、逃げるぞ!」
「え? うん!」
俺と咲羅は全力で走る。
インドア陰キャの、そして行事管理部の本気を見せてやる!
……あ、咲羅のほうが足速いわ。
※恋愛系です。銃殺されるシーンはありませんのでご安心ください。そしてミステリー系の小説でもありませんので、犯人さがしなどはしません。繰り返します。ご安心ください。