第177話 咲羅と駅前へ 〜2〜
「――そうそう、でさ、姉ちゃんが急に椅子に立って熱唱してさ」
服屋に行ったあと、レストランで昼食をとることにした。
レストランっていっても、どこにでもあるようなファミレス。
「天太のお姉さんってそんなことするんだね……」
「たまに頭のねじ外れるときあるからな」
「天太はそういうことしないの?」
「するわけねぇだろ」
「なんか意外」
「なんで?」
俺が言うと咲羅は軽く笑う。
なんか笑ってるのを隠したそうな感じだけど、バレバレだな。
それはそれで面白いからいいけど。
「そういえば質問なんだけど」
「ああ、どうした?」
「湊亜となにしたの?」
湊亜?
……ああ、湊亜を助けるときに、湊亜とどういうふうに話し合ったのかってことか。
話し合いはしてないんだけどな……。
「話し合いはしなかったな」
「え、話し合いしなかったの!?」
「ああ、俺がいきなりやった」
「いきなり!?」
「まぁな」
「天太……。私のときはそんなことしなかったのに……」
? なに言ってるんだ?
「ま、まぁ、別に天太の勝手だから、別に私は悲しくはないけど」
「お前……、なに話してるの?」
「いや、湊亜の家に泊まったことでしょ」
湊亜の家に泊まったこと?
え、そんな昔――って言うほど昔でもなかったな。
でもそんなこと今話してるの?
なんで?
「……どういうこと話してると思ったの?」
「いや、湊亜を助けたときのことかなって」
「そんなこと話すわけないでしょ! もう掘り返さないし!」
え、そうなの?
反省会とかかと思ったよ。
「私の言葉からして、完全に湊亜の家に泊まったときのことでしょ! で、結局湊亜となにしたの?」
「なにって……。別になんもしてないと思うけど……」
「お風呂とか入ったり、シャワー浴びた?」
ああ、それなら浴びたな。
湊亜から借りた。
あのあとの湊亜のお母さんとの会話はすごかったな。
確か、俺のあとに湊亜がシャワーとか浴びたんだよな。
「ああ、浴びたぞ」
「ん!?」
「そんな驚くか?」
「驚くよ! なんで私のときは……」
「さっきから本当になに話してんの?」
「ってか、湊亜との間に子供できたらどうすんの! 湊亜、責任とれるように思えないよ!?」
……は?
子供?
……あ、意味がわかってしまった。
「お前……俺と湊亜は付き合ってるわけじゃないからな?」
「付き合ってなくてもそういう経験する人もいるでしょ!」
「それでもしてねぇよ。するわけねぇだろ」
「……ならよかった……」
いや、なにがよかったんだよ。
最近咲羅もおかしくなってきたな。
……いや、咲羅がおかしいのはもとからか。