第176話 咲羅と駅前へ 〜1〜
翌日。
「――ごめん、遅れた!」
俺は駅前のバス停のところにいる咲羅に向かって大声で言う。
その咲羅はスマホから目をはなして俺を見る。
今日は平日で、今は午前11時。
だけど俺と咲羅は制服を着てなくて、しかも学校にも行ってない。
もちろん、今日はいつも通り学校はある。
「そうだね、3分遅刻」
「信号に引っかかってて……」
「じゃ、その3分、解散は延長ね」
「わかってる。じゃ、行こうぜ」
「うん」
俺と咲羅は同時に歩き出す。
学校を休んだのは、咲羅と遊ぶため。
学校に休みの連絡は入れてない。
だってずる休みだから。
『遊ぶんで学校休みまーす』なんて言えないからな。
あのあと――昨日俺が家に帰ったあとだ。
急遽咲羅と遊ぶことになった。
誘ったのは俺。
どうせ俺が学校に行っても変な目で見られるだけだし、学校に行きたくなかった。
だから遊ぶことにした。
無理を承知で咲羅に今日遊べるか訊くと、なぜか『いいよ』ってきた。
特にしたいこととか、目的の場所とかない。
ただ家とか学校以外のところにいたかった。
「で、最初どこ行く? 買い物とか? デパートあるし」
「ああ、いいな。そういうとこ行ってみたかったんだ」
「あー、確かに天太そういうとこ行ったことなさそうだもんね」
「俺の座右の銘は『インドア陰キャ』だからな」
「なにそれ」
咲羅が笑いながら言う。
それにつられて俺も笑った。
「――これとか似合いそうじゃん!」
最初は服屋に来た。
咲羅は黒色のパーカーを俺に見せる。
「おー、パーカーか。ダボってしてる感じが落ち着くんだよな」
「うん、そういうのが似合いそう」
「試着してみれば?」
「ああ、やってみよっかな」
俺は咲羅からパーカーを受け取って試着室に向かう。
試着とか初めてかもな……。
試着室に入ってみたけど意外と狭い。
試着室大きくしても意味ないか。
すげー、ちゃんとでっかい鏡ある……。
なんか夜遅くに一人でここに来たら怖そうだな……。
そう思いながら咲羅から受け取ったパーカーを着る。
うん、サイズはちょうどいい。
いろいろと確認してからドアを開ける。
目の前にはちゃんと咲羅がいた。
……いなかったら困るけど。
「おー、ちゃんと似合うじゃん!」
「そ、そうか……?」
「うん、『主人公の親を殺したけど、本当は悲しい過去があるボスキャラ』って感じ!」
いや、どんな比喩だよ。
想像つかないわ。
しかも敵キャラなんだ。
これって喜んでいいのかな……?