第174話 咲羅からの話
独りで帰ってた。
湊亜も総一朗も、『一緒に帰ろ』と誘ってくれたけど。
俺は『わかった』とだけ言って、二人が俺を見てないときにこっそり抜け出した。
俺はもう、明日から学校に行かない。
行く勇気がない。
湊亜も、みんなに『あれは演技』って言ってくれたけどみんな信じてくれなさそうだった。
……それでいいんだ。
もともと嫌われてなきゃダメなんだからな俺は。
そうだよ、なんで俺はみんなに好かれようとしてた?
嫌われなきゃいけないのに。
「――天太」
前から声がする。
気づいたら、目の前に咲羅がいた。
俺を睨んでる。
「ついてきて」
「……なんでだ?」
「話がある」
「説教かよ、『いじめはよくない』とか」
「ふざけてるの? そんなんじゃないよ?」
「じゃあなんだ? 『名取に土下座して謝れ』って言うのか? 俺はあいつなんかに――」
「いい加減にして!」
俺の声を遮って咲羅が叫ぶ。
「……もういいよ、それならここで話す」
「……意味がわからないな、なにを話すんだ? 俺はお前と――」
「バカ!」
咲羅が急に俺の左頬を平手打ちする。
ものすごく痛い。
俺はその痛む部分を手で軽くおさえながら咲羅を見る。
急な咲羅の行動に、頭が追いついてなかった。
「自分が嫌われれば解決するなんて思わないでよ!」
俺と咲羅の距離はかなり近い。
それでも咲羅は叫んでた。
「名取に全部教えてもらったよ! 天太がなんのためにあんなことしたのか、全部! なんでああいうことしか思いつかないの!」
「……俺は……嫌われなきゃ……いけないんだ……」
「そんなことない! なんで自分だけが苦しむことをするの! 天太だってあんなことしたくなかったはずじゃん!」
「…………」
「本当になんも変わってないね! 自分で全部解決しようとする! 他人は巻き込まないで!」
「……別に俺がどうなっても……、咲羅は大丈夫だろ……?」
「大丈夫じゃないよ! 大好きな人が苦しんで大丈夫なわけないじゃん!」
咲羅はそう叫んだあと、俺に抱きついてきた。
そして号泣してる。
俺はどうしたらいいかわからなかったから、俺に抱きついてきてる咲羅を抱き返した。
そして『ごめんな』ってつぶやいたけど、咲羅に聞こえてるかどうかはわからなかった。
今回の話で伝えたいことがありましたので、ここで改めて伝えておこうと思います。
『一緒に帰ろ』と言われて『うん』と返事したのに独りで帰るのはできる限りやめましょう。