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第173話 もう覚悟は決まったし

 昼休みになった。

 いつもは咲羅たちと屋上とかで弁当を食べる。


 でも今日はそういうわけにはいかないみたいだ。

 湊亜と総一朗、それから名取しか話しかけてこない。


 噂ってすごいよな。

 もう広まってる。

 『木神天太は暴力を振るった』とかそういうやつ。


 それより弁当どうしよっかな?

 湊亜たちと一緒に食べたら、そいつらも変な目で見られちまう。

 だから独りで食うか。


 「天太くん、お弁当つくってきたよ」


 いろいろと考えてると、弁当箱を二つ持った湊亜が来る。

 こいつは笑ってる。

 多分作り笑い。


 「湊亜、今はやめとけ。お前まで変な風に見られる」

 「そんなの気にしないよ。それに、もとはといえば私のせいで天太くんがこんな目に遭っちゃってるし」

 「お前のせいじゃねぇよ、全部俺が考えたことだ」

 「でも……。それに、私がいくらみんなに説明しても、みんな納得してくれないの。『天太くんは本当はあんなこと思ってない』って言ってるのに」

 「本当ですよ」


 後から声が聞こえる。

 そこには名取がいた。


 「私も同じように言ってるんですけど……」

 「簡単には信じられないようなことだからだろ、とにかく俺はもういいよ。退学する覚悟だったし」

 「……そういえば、白糸さんは今日いますか?」

 「さぁ? 見てねぇけどな」

 「……まずはあの人に見せなきゃいけません」

 「なにを?」

 「天太くんが教えてくれた、あのノートです」


 ああ、あのノートか。

 いまさらだけど、あれには作戦が書いてあった。

 それを名取と総一郎に見せたんだ、メールで。


 「いや、やめとけ」

 「なんでですか? そうすれば――」

 「いいんだよ、もうきっと咲羅も俺のことは嫌いだ。俺は咲羅が本気で悩んでいたことを悪口として言った」


 『ストレス発散方法がリストカットするしか思いつかないやつなんかに!』

 あのとき言った言葉だ。


 多分、絶対に忘れない。


 あんなこと言われたし、咲羅はもう俺のことが嫌いなはずだ。


 心の中で俺は『みんなに嫌われれば、俺がもしなにかあっても誰も悲しまない』って思ってたんだ。

 正直、嫌われたくはないけど。


 「俺は……嫌われれば……誰も悲しまないんだ」

 「それは間違ってます」

 「なんでだ? せいぜいすると思うぜ?」

 「そんなことをしても白糸さんは喜びません!」


 名取は急に怒鳴って、教室から出ていった。

 ……なんだよ、あいつ。






 「――白糸さん!」


 数刻後、一人で廊下を歩いていた咲羅が誰かから声をかけられる。

 名取だった。


 「……なに?」


 張りのない声で言う咲羅。


 「天太くんのこと、どう思ってます?」

 「天太? 天太は……」

 「これを見てください! 天太くんはなにも悪いことはしてません! 夜泉さんを助けただけなんです!」


 名取はポケットからスマホを出して、ある画面を表示して咲羅に見せる。

 それはノートの写真で、『湊亜を助けるために』という文から始まっていた。


 そして最後の方に『全てを捨てる覚悟で演技する』と書いてあるのを、咲羅は見逃さなかった――。


『多分、絶対に忘れない』。

矛盾発言ですかね?

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