第172話 もういいんだ
途中から3人称視点になります!
「……ごめんね、みんなが来たの……、私のせいなんだ」
歩いてたら湊亜が喋り始めた。
俺はそれを、湊亜を見ないまま聞いた。
「天太くんと離れたあと、みんなが来て……。それで、泣いてるところ見られちゃって……。それで――」
「湊亜のせいじゃない。これは全部覚悟してたことだし」
「でも天太、咲羅さんにあれは言い過ぎだと思うぞ。あの感じ、かなりショック受けてる」
「それでいいんだよ。みんな俺から離れたほうがいい。多分俺、処罰受ける。変なのに巻き込まれたくないだろ? 最悪、警察沙汰だし」
「でも天太くんは夜泉さんを助けたのですよ? そんなんで――」
「いいんだよ」
俺がそう言うとみんなが黙り始めた。
自分で言って改めて気づいたけど、警察沙汰になるかもな。
みんなから見たら、俺は名取を殴ったり蹴ったりしたんだし。
警察に捕まる覚悟はできてなかったな、退学の覚悟はできてたけど。
警察はさすがに嫌だな。
逮捕はされたくない。
わがまま言うと、退学も嫌だけど。
親がせっかく学費とか払ってくれてたのに、退学なんてしたらそれが全部なくなる。
気づいたら学校の正門まで来てた。
こういうときってあっという間に時間ってすぎるんだね。
昨日と同じように、ここで先生に怒られた。
その間も3人は俺を待ってくれてた。
これはありがたい。
一人で教室に行く勇気がなかった。
教室に行くと、いつもと違った。
いつもは数人の女子生徒が俺のところに来るのに、今日は来ない。
みんなただ、ゴミを見るような目で俺を見ている。
俺はそれを受け流して、自分の席に座る。
総一朗と湊亜はすぐに俺のところに来てくれた。
二人は無理して話題を出してくれてるように見えたけど、話す気になれなかった。
正直に言うと、今はあんまり話しかけてほしくない。
……ああ、こんな気持ちだったんだな、あいつ。
話したくないのに無理に話しかけられる。
つらいな、確かに。
「白糸先輩! 待ってください!」
同刻、言音が咲羅に言う。
その後ろには実璃もいた。
咲羅は歩いていて、二人はそれを追っていた。
「白糸先輩!」
「…………」
咲羅が黙りながら止まる。
それに合わせて言音と実璃も止まった。
「き、木神先輩があんなこと本気でするわけがありません! あれにはなにか――」
「……いよ……」
咲羅がつぶやくので、言音はなにかを言うことをやめた。
「……ひどいよ……。なんで……? 天太……」
そのときに言音は気づいた。
咲羅が泣いていることに。
「白糸先輩……」
「天太……。なんで……?」
咲羅はそう言って再び歩き始めた。
言音はそれを追う。
実璃はただ黙って、その光景を見ていた。
作者の定期考査が無事終了しましたので、今日から投稿を再開させていただきます。これからもよろしくおねがいします。