第17話 母さん、帰宅
「たーだいま!」
夜7時。
母さんの呑気な声とともに、玄関のドアが開く。
なんか色々と持ってる母さんがいた。
……絶対飲んでるな……。
「あー! 私のかわいい天太ちゅわーん!」
母さんが俺に抱きついてくる。
やっぱり酒臭い。
そしてちょっと気持ち悪い!
「母さん! 飲み過ぎるなっていつも言ってるだろ!」
「そんなに飲んでないもん!」
うわー……これダメなやつだ……。
「ちょっ、姉ちゃん! 母さんどうかして!」
「無理だよ! 私、そのお母さんはどうにもできないから! 天太! 頑張って!」
なんで!?
助けてよ!
総一朗といい、姉ちゃんといい……!
なんで誰も助けてくれないんだよ!
「――さーん!」
……え?
今なんか、外から声がしたような……。
「天太さん!」
女の声……。
って、この声……!
俺は前にいる母さんを無視して、玄関のドアを開ける。
やっぱり、実璃がいた。
「み、実璃!? なんでここにいるんだよ!」
「いえ、咲羅さんに家がここだと聞いて!」
「だからなんで俺の家の前にいるんだよ!」
「会いたかったので!」
なんで!?
俺に会いたかったの!?
「女の子の声!」
姉ちゃんがバタバタと音を立てて俺の後ろに来る。
「って、超美少女じゃん!」
姉ちゃん……。
「あ、天太さんのお姉様ですか!」
「そう! もしかして天太の彼女!?」
「い、いえ! そういう関係では……!」
実璃が力強く言う。
こいつもちゃんと大声出せるんだ……。
そう思っていたら、急に実璃が崩れる倒れる。
……いやいや! なんで倒れた!?
俺は急いで実璃のところに行く。
実璃はめっちゃ熱くなっていた。
そしてハァハと言ってる。
マジでヤバいじゃん……!
俺は実璃を背負い、家の中に入れる。
そして、急いで俺の部屋に行き、ベッドに寝かせる。
マジで救急車……!
俺はスマホに手を伸ばす。
すると実璃が急に起き上がり、俺の手を掴む。
めっちゃ怖い。
ホラー映画のワンシーンみたい。
「き、救急車は……、さすがにやめてください……!」
「……わかった……。だからさ……、それやめて……! めっちゃ怖いんだけど……!」
「……え!? あ! はい!」
実璃は俺の腕から手をはなす。
そしていつも通りの小声になっていた。
「……で、なんで俺の家の前に……?」
「会いたかったので……」
それはさっき聞いた。
なんで俺に会いたかった?
「お前な……、もう7時だぞ? こんな夜に独りで来たの……?」
「会いたかったので」
……どうしよう……実璃が同じことばっか言う……。
「じゃあ特に俺に用はないのか?」
「会いたいってこと以外は」
「じゃあ送ってく。……いや、ここで少し休んでからにするか?」
「いえ……私だけで大丈夫です……。ご迷惑をおかけしました」
急に冷静になってる……。
さっきまで『会いたかったので』しか言ってなかったのに……。
「いや、女子高生独りで夜中に道を歩くなんて危ないだろ?」
「えっと……」
実璃……結構面白いやつだな……。
個人的に実璃が好きだな……。