表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
167/258

第167話 我慢なんてするな

 「えっと、天太くん……。どうしたの……?」

 「え、な、なにがー?」

 「なにか隠してるでしょ?」


 なっ、なんでわかるんだ……!

 さすが湊亜……、そう簡単にはいかないか……!


 「この道、天太くんはわかってるでしょ?」 

 「……どういう意味だ?」


 これは演技とかじゃなくて、本気で思ってることだった。


 「ここ、『あの人たち』がいるところだよね。毎日いるから疲れるよ」

 「湊亜……」

 「多分だけど、私のためになにかしてくれてるんだよね。昨日からそんな予感はしてたよ。天太くんが急に目立つようになったのもおかしいし。さすがにその考えは自意識過剰かな?」

 「…………」

 「ありがとう、すっごく嬉しいよ。でも天太くんを巻き込むわけにはいかない。私一人が我慢すればいいだけだから大丈夫だよ」


 湊亜はそう言って俺の横を通り過ぎようとする。

 こいつ一人で『あいつら』のところに行くつもりだ。


 俺は咄嗟に湊亜の前に立つ。

 そして抱き着いた。


 自分でもなんでこんな行動してるかわからない。

 湊亜も驚いてるけど、俺自身も驚いてる。


 「湊亜、我慢なんかするな」


 驚いてるわりには、しっかりした声が出た。


 「それは我慢しちゃいけないことだ。誰かに頼るべきことなんだ」

 「あま……た……くん……?」

 「今までつらかったよな。たとえ今、もういじめられたないとしても、つらいよな。一度でもあんな経験すると、もう忘れられないよな。全部わかる」


 俺がその言葉を言い終えると同時に、湊亜も俺を抱く。

 小刻みに湊亜の動きが揺れてるのもわかった。


 「自分一人でため込むな。全部吐き出して、助けを求めろ」

 「じゃ……じゃあさ……、言うよ……?」


 震えてて、小さい声で湊亜が言う。

 湊亜が泣いてることはもうわかってた。


 「つらいよ……! 思い出したくないのに……、忘れたいのに……! なのに! なのにできないよ……! 天太くん……、助けてよ……!」

 「……よく言った」


 俺は湊亜を強く抱く。


 「あとは俺に任せてほしい。絶対に助けてやるから」


 俺はそう言って、湊亜から離れる。

 そして総一朗が向かった方向に歩き出した。


 ……湊亜のあんな顔見たら、絶対に成功させるしかないな。

 そのためになんでも捨てる覚悟で計画したんだ。


 ただ、次で俺の全てが変わるかもしれない。

 そうだ、全てを捨てるんだ。


 だから湊亜を助けなきゃ――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ