第166話 『例の日』の朝
「あー、緊張するー」
次の日の朝、しかもいつもよりちょっと早い。
今俺は名取と総一朗の3人と一緒にいる。
そして今俺たちは例の道路に向かっている。
「やっぱり違和感しかないですね……。天太くんのその姿」
「本当だよ。ピアスまでつけやがって……」
「でもこれ大変だったんだからな? 耳に穴あけるんだぞ?」
そんな会話をしながら俺たちは歩き続ける。
「……じゃ、そろそろ本題入るか。なるべく湊亜は巻き込みたくないのは理解してほしい」
「最初からそのつもりだ。ま、湊亜さんにあいつらの土下座を見せられないのは悔しいけどな」
「ま、あのノートの通りにすればいいんですよね?」
「ああ」
名取にもメールであのノートのことを教えて、写真を送ったのだ。
名取もそれを見て納得してくれたし、この感じからすると裏切られる感じはない。
「では、私はここで失礼します」
名取はそう言って止まる。
でも俺と総一朗はそのまま歩き続ける。
もうちょっと離れたら俺も止まる。
総一朗だけがもっと奥に行くようにする。
「……その顔、覚悟できてるみたいだな、湊亜さんのために」
「当たり前だ。湊亜と知り合ってから長いとは言えないけど、あいつは俺を信じてくれたし、俺はあいつを助けたい」
「……やっぱお前が主人公だよな」
「バーカ、主人公はお前だろ? そう自分で言ってたじゃねぇかよ」
「じゃ、今日はそうさせてもらうよ」
「ああ。湊亜のため――」
「私?」
後ろから予想外の声が聞こえた。
驚いて振り向くと、ちゃんと湊亜がいた。
元気そう。
「そ、湊亜さん!? なんでここに!?」
「歩いてたら天太くんと江島くんが見えたから」
「へー、視力いいね!」
……総一朗のやつ、湊亜のことバカにしてる?
それより、ここで湊亜が出てきたことは予想外すぎる。
さーてと、どう言い訳しよっかな……?
「あ! そういえば俺、向こうのところにタイムカプセル埋めてきたんだよ! 2年前かな? それを学校に行くついでに掘りに行きたいんだ! 湊亜さんも……、あ、あと天太もついでに来るか?」
え、こいつタイムカプセル埋めてたの?
ってか、俺と湊亜を巻き込むな。
まったく、こんな状況なのになに考えて――
――いや、待って、気づいた。
これは演技か。
こっから上手く繋げれば、湊亜を巻き込まなくてすむ。
本当にすげぇな、総一朗。
ならば俺も演技だ。
湊亜に学園祭のために教えてもらった演技力、ここで披露させてもらう!
「へ、へー! た、タイムカプセルかー! す、すごいなー! で、でも俺と湊亜をー、巻き込まないでくれよー!」
よし、完璧すぎる演技力だ。
「えー、湊亜さんと一緒がよかったのに……。ま、見られるの恥ずかしいから俺一人で行くよ。じゃ、ここで待ってろよ?」
総一朗はそう言って向こうに行く。
湊亜はポカーンって口を開けて俺を見ている。
湊亜も驚くこの演技力……!
やっぱ俺、才能あるかも。