第165話 名取が来た
「……本当になにがあったんですか?」
放課後、終礼が終わって教室で帰る準備してたら名取が来た。
名取の持ってる荷物の感じから、こいつはもう終礼とかも終えてるらしい。
「お、名取か」
「だいぶ派手ですね」
「ありがとな」
「褒めてるつもりはないんですが……。それより、なぜ急に?」
「なにが?」
「文脈から判断してください。『なぜ急に目立とうとしてるんですか』と訊いているんです」
あー、どうしよっかな?
名取には話してもいいかな? 誰にも話さないって条件で。
でも名取と1回ケンカ……っていうのかな?
ま、それしちゃってるからな……。
信用できるかって言われると……。
いや、名取はもう信用して大丈夫な気がする。
こいつが俺を敵にする理由なんかないはずだ。
それに、こいつの演技力なら信頼できる。
俺には及ばないけど。
近くに関係者がいないことを確認して、名取にさらに近づく。
「湊亜のためだ」
「夜泉さん? なぜ?」
「助けるんだよ、あいつを今の状況から」
そこまで言うと名取もなんとなく察せたらしくて、うなずく。
「でもどうやって助けるんですか? それで天太くんが派手になる理由がわからないんですけど」
「ヒントな。俺がこの姿でお前にキレ気味に話しかけたらどうなる?」
「どうって……、『イケメンが来たなー』としか」
「いや違うだろ。怖いだろ?」
「まぁ、そうですね。いつもよりかは迫力あると思います」
「それがヒント」
「いや、全然わからないんですけど」
「それは察せられないお前が悪い」
「悪いの私ですか」
「……それより湊亜は?」
「さきほど帰りましたよ。急ぎの用があったみたいで」
「そっか。名取、今日時間あるか? あるならついきてほしいんだ」
「わかりました。ついていきます」
俺の予想だと、今日は湊亜を救えそうにない。
だからリハーサルといくか。
「――ここですか?」
とある道路のところに来た。
俺はここに来るのが2回目だ。
「ああ、見覚えあるだろ?」
「私はわかりますよ、ここ。で、なぜここが?」
「さっきの質問と照らし合わせてみろ。ここには誰がいる?」
「それは……。……。……! そういうとですか!」
お、もう完全にわかったみたいだな。
さすが名取、察しがいいな。
「成功すると思うか?」
「成功してもらわないと困りますけどね」
名取は笑って俺に言う。
そうだな、成功しないと意味ないな。
……どうせなら名取にも手伝ってもらおう。
「名取、頼みがある」
「なんですか?」
「やってもらいたいことがあるんだ――」