第160話 反省の土下座
「本当に申し訳ございませんでした」
土下座する俺。
ふざけてるんじゃなくて、真面目にやってる。
目の前には咲羅と実璃と言音。
なんで謝ってるかっていうと、咲羅たちをずっと俺の家の前に立たせてたから。
家は誰もいなかったらしくて、インターホン押しても無反応だったからずっと待ってたらしい。
俺にメール送ってくれたみたいだけど、全部俺が気づかなかった。
一番よくないのが、そのせいで2分くらい3人が遅刻したこと。
内申とかにも響くからマジで笑えない。
ギリギリまで俺の家の前にいて、めっちゃ走ったみたいだけど間に合わなかったらしい。
だから俺がなに言われるかわからない。
絶交とかかな……?
「……本当に反省してる?」
咲羅の声がする。
でも頭を上げるわけにはいかない。
「はい」
「じゃあなんでも言うこと聞いてくれるよね?」
「はい……。俺にできることなら……」
ヤバい、めっちゃ怖い。
なにやらされるんだろ……。
「じゃあさ、今日の放課後、一緒にファミレス行こ。食べたいものがあるから」
……え?
本当にそんなのでいいの? 俺からこう言うのはおかしいと思うけど。
顔を上げて咲羅の顔を見てみる。
そしたら微笑んでた――わけじゃなくて無表情。
実璃と言音は……地味に微笑んでる……?
「私は別に気にしてませんし、気にしなくていいですよ。推薦も狙ってるわけじゃありませんし」
「私も気にしてません! それより心配しましたよ! 木神先輩が家の中で倒れてたりしてるのかと思いました! せめて連絡はほしかったです」
「ご、ごめん……」
「無事ならよかったです! では、ちょっと用事あるので私はここで失礼します!」
それだけ言って言音はどっかに行った。
「……で、いつまでそんなかっこうでいんの? いい加減立ち上がんな?」
なぜか俺と目を合わせないまま咲羅が手を差し伸べてくれる。
俺は反対に、咲羅の顔を見ながらその手をとる。
そして言った。
「ありがとな、いつも」
そしたら咲羅も俺の目を見てくれた。
だんだん顔が赤くなってきてる。
でも俺から目を離さない。
「……うん」
咲羅は微笑みながら言った。
『――もう、いいから』
! なんだこれ……!
頭の中に突然女の声が響く。
間違いない、アイツの声だ……。
なんだ……これ……、フラッシュバック……?
『余計なことしないで』
また聞こえた。
『ずっとそう言って、偽善なんだよ』
……わかってる。
そんなの俺が一番わかってる……!
だからもう――!
「――天太……?」
咲羅の声が聞こえた。
それのおかげで、さっきまで聞こえてた声がおさまった。
「え?」
「急にボーッとしてたけど大丈夫?」
「あ、ああ……」
……『偽善』、か……。