第16話 ファミレス行った
「? どうしたの? そんなキョロキョロして」
ファミレス。
見慣れない景色に混乱する俺。
その目の前で美味そうにティラミスを食べる咲羅。
「いや、ファミレスなんて行ったことないから……」
「え? 行ったことないの?」
「ああ」
「……マジ?」
マジ。
ってかみんなファミレスって行ったことあるの?
「家族とかと行かない?」
「家族か……」
誘われたことはあるけど……。
何年前だっけ……?
「天太ー! レストラン行くって!」
やや興奮気味な姉ちゃん。
俺が10歳くらいのときだっけ……?
「お母さんが連れてってくれるよ!」
「えー、俺カップ麺でいいんだけど」
「毎日カップ麺じゃないの。たまには外食もいいでしょ?」
母さんは色々と支度をしながら言う。
俺は小説を読んでた。
「外出たくない」
「えー……」
「……じゃあ今日はお家でご飯みたいね」
「え!? 私外で食べたいー!」
ダダをこねる姉ちゃん。
そんな姉ちゃんを無視して、俺は小説を読み続ける。
「でも……」
「俺は本読んでるから、二人で行ってきな?」
「……いいの……? お留守番できる?」
「もう10歳だからできる」
「――おーい、どうした?」
咲羅が俺の顔をのぞきながら言う。
「さっきから動いてないけど」
「あ、ああ……ちょっと思い出してた……」
咲羅は不思議そうに俺の顔面を見つめたあと、再びティラミスを食べ始める。
「あのさ……、家族が『ファミレス行こうよ』って誘ってきたら一緒に行く?」
「え、行くでしょ」
あ、行くんだ。
行かないの俺だけかな?
「逆に行かないの?」
「まぁ……」
「そういう人もいるんだ……」
そのあと、黙々とティラミスを食べ続ける咲羅。
めっちゃ気まずい……。
そのとき、俺のスマホが震えた。
誰かからメールが来ていた。
総一朗からだ。
『貴様……咲羅さんとデートしてるな!』……。
デート……?
『全部見てるぞ……!』。
ストーカーじゃん。
ってか、どこから見てるんだ……?
見られてる気配とかないし……。
「誰かからメール、来てた?」
咲羅が訊いてくる。
「いや、特に」
「…………」
なんで黙り込むんだ……?
……今のうちに確かめていくか。
咲羅がツンデレかどうか。
「咲羅、誰からメール来たと思う?」
「え……。家族さん……?」
「違う。ヒントは女だ」
「……マジで……?」
お、いいぞ。
もうちょっとからかってみるか。
「ああ、マジで」
「……恋人……いる……?」
咲羅がしょんぼりした顔になる。
……おもしろ……。
これ以上やるとガチで怒られそうだからこのへんにしておくか。
「嘘だよ、噓。男友達」
「は!? めっちゃ焦ったじゃん!」
そんなに怒るか……?
まぁ、これで咲羅は本物のツンデレか……。