第158話 湊亜と登校中
「じゃ、行ってくるねー」
湊亜が最後にそう言って家から出る。
俺も湊亜に追いかけた。
朝飯食べ終わって、今から学校に行く。
「ありがとね、急に泊まってくれて」
「あ、ああ……、俺は大丈夫だけど……」
「よかったらこれ、あげるよ」
湊亜がスカートのポケットからなにか出す。
箱?
湊亜はその中から立方体の銀紙で包まれたなにかを出して、俺に差し出す。
「……なにこれ?」
「キャラメル? 嫌い?」
「いや、むしろ好きだけど……」
「じゃあどうぞ。お礼だよ」
湊亜がグイグイ押し寄せてくるから受け取った。
そういえば湊亜、好きな食べ物キャラメルだった気がする。
転校初日で質問されたときに言ってたな。
湊亜はもう一つ出して、それを食べる。
だから俺も食べた。
甘い。
「最近勉強難しいよね……。昨日休んじゃったからな……」
「まぁ、なんとかなるよ」
「そうだといいけどね……」
「大丈夫、基礎復習みたいな感じだったし」
「それなら――」
「少しいいですか?」
湊亜の声を遮って後ろから聞こえる声。
俺たちは同時に振り向いた。
そこには名取がいた。
「こっちの道は避けましょう」
「……なんでだ?」
「詳しくは歩きながら話します」
「……強制か?」
「強制とは言いませんが、そのほうがお二人のためだと思います。ま、あなたたちがどう思おうとその道には行かせませんけど」
手をサッて後ろにする名取。
なにか出してくる……!
「これでどうですか?」
手を前に出す名取。
なんか持ってる。
縦長の……、カラフルな袋……?
……アイス?
「これなら行きますよね? これには目がないみたいですし」
「……あ、もしかして私に言ってる?」
「はい。どうぞ? 我慢しないで受け取ってください」
「えっと……、アイス? まぁ……、好きだけど……、目がないってほどじゃないよ……?」
「あれ?」
驚いてる名取。
なんかこの表情新鮮だな。
ってか、アイスに目がないのは実璃じゃね?
なんかかわいそうだから説明してあげよ。
「名取、アイスに目がないのは実璃だぞ?」
「……! そうだった! どうしよう……」
おー、名取が焦ってる。
面白い。
「で、でも美味しいですよ! 今買ってきたばかりなので溶けてません! すぐそこのコンビニで!」
「……なんでそこまでして俺たちを釣る?」
「……さっきも言いました。そのほうが天太くんのためです」
……どうしても言いたいことがあるみたいだ。
仕方ない、行ってあげよ。