第156話 夕飯準備
湊亜のお母さんと話してわかったことがある。
この人めっちゃ器用だ。
俺と話しながら夕飯つくってくれてる。
あと野菜切る音とかすごい。
『タンタン』って音じゃなくて『シュッシュッ』って鳴ってる。
しかもよく耳澄ませないと聞こえない。
俺はただ座ってるだけなのに……。
「――おまたせー!」
髪濡らしてる湊亜が来る。
当たり前だけど服装変わってる。
髪も結んでない。
髪おろしてる湊亜見るの初めてかもな……。
「お、そろそろできそう?」
「うん。あとちょっと」
「そっか。ご飯炊けてる?」
「それはもうできてるよ」
「わかった、ありがと。天太くんってどのくらい食べる?」
移動しながら喋る湊亜。
「あ、でもお弁当大盛りだもんね。大盛りがいい?」
いや、弁当は別に大盛りじゃない。
ただ普通盛りが大量にあるだけ。
最近は母さんにつくってもらってないけど、8個くらい食べてる気がする。
すごくない?
「そんないらない」
「遠慮しなくていいよ?」
「いや、弁当で無理してるだけ」
「あー、いっぱいもらってるもんね」
そう言いながらも米をよそってる湊亜。
手慣れてるな……。
……そういえば湊亜のお父さんは?
まだお仕事かな?
ま、今どこにいるかとか訊くつもりはないけど。
「……はい、どーぞ」
俺の前に湊亜が米と野菜炒め、味噌汁を置く。
いつの間に味噌汁もよそったのか……。
そして気づいたら俺の向かい側に湊亜も料理並べてる。
「じゃ、いただこっか。いただきます」
湊亜が丁寧に手を合わせて言う。
礼儀正しいな。
俺も食っていいのかな?
「い、いただきます……」
そう言ってから食べ始める。
うん、ちゃんと美味しい。
夕飯食べ終わって、今は湊亜の部屋にいる。
普通に雑談してた。
でもそろそろ10時。
寝るとこ決めなきゃいけない。
空いてる部屋とかあるかな……?
なかったらどうしよう……。
風呂場で寝るとか?
「……あ、寝るところ決めなきゃね」
俺の考えが伝わったのかわからないけど、湊亜が気づいてくれた。
「うーん……、私の部屋でいい?」
いやいや、それはダメでしょ。
「私のベッドで寝れる」
それはさらにダメでしょ。
咲羅のときもそうだったけど、なんでみんなこういう考え方なんだ……。
「私はリビングとかで寝るからさ」
これも咲羅と同じ……だったと思う。
こういうときどうしよう……。
『ありがとう』って言って言う通りにするか、『それはダメ』って断るべきか。
そもそも男の俺が女の湊亜のベッドで寝ていいのか?
付き合ってるとかならまだわかるけど。
それで断るとしても、泊まらせてもらってる身だからな……。
作者の定期考査が(一部教科は二つの意味で)終わったので今日から活動再開させていただきます。これからもよろしくお願いします。