第153話 湊亜の部屋まで
湊亜の部屋まで連れて行かれた。
案内してくれたのは湊亜のお母さん。
部屋の中には湊亜がいた。
「じゃ、飲み物持ってくるからね」
湊亜のお母さんはそう言って部屋から出ていった。
湊亜は黙って俺を見つめている。
なにすればいいかわからなかったからそのまま立ってた。
しばらくしたら湊亜のお母さんがコップを二つ持って入ってきた。
多分オレンジジュース、コップの中に入ってるの。
「座りな?」
湊亜のお母さんがそう言うから、俺は座った。
勉強机……なんか一人用のやつ……、しかないからコップは床に置くしかない。
そしたら湊亜のお母さんは出ていった。
「……ごめんね、急に呼んじゃって」
やっと湊亜が喋る。
「なんか……、天太くんには話しておきたくて」
「ああ、なんだ?」
「ちょっとさ、あの人たちにまた絡まれちゃったんだ」
『あの人たち』って、多分文化祭の日に会ったやつらだ。
湊亜をいじめてたやつらかな?
「何回も家に来るんだ。それでさ……、どうすればいいかな……?」
「何回も家に来るって……。よくわかんないけど犯罪とかじゃないの? それ」
「わからない」
「一応警察とかそういうのに相談するか? もし犯罪だったらなんとかなるし」
「でもそんな大事にしたくないよ。それに、そうしちゃったらあの人たちの人生がめちゃくちゃになっちゃう」
湊亜……。
いじめてたやつらのことなんか考えなくていいのに……。
優しすぎるのか……。
「俺は警察沙汰にしてもいいと思うけどな。いじめてたやつが悪いと思ってる人だし」
「そしたら色々な人に迷惑かけちゃうよ」
「そんなこと気にしてる場合じゃない」
「……そっか、考えとく。ありがと」
……相談終わりかな?
湊亜の家に来て数分しか経ってないのにもう用が済んだ。
どうしよう、帰ろっかな?
いや、帰る以外選択肢ないんだ。
湊亜の家にずっといるわけにもいかないし。
「……あ、忘れてた。湊亜、プリントがある」
荷物から、さっき先生からもらった封筒を出す。
これが1番大事だったんだ……。
「はい」
「あ、ありがとう。どんなのかな……?」
封筒を開ける湊亜。
中から色々プリントを出す。
「……天太くん、これはなに?」
紙を見せてくる湊亜。
それには『ピーナッツとピーマン、どっちが好き?』って書いてある。
……なんか見たことある気がする、このプリント。
なんだっけ?
「ま、関係ないやつだと思う」
「そっか、ありがと。これからすぐ帰る?」
「まぁ……、ずっとお邪魔してるわけにもいかないし……」
「……私は全然いいよ。よかったら……、ここで泊まる……?」
……はひ?