第148話 名取、再会
「……は? 誰だよ、アンタ」
「名前を訊く際は自分から先に名乗るのが常識だと思いますけど?」
「いやいや、そっちが先に話しかけてきたんじゃん。なに? お前もヒーロー気取り?」
「ヒーロー気取って悪いですか?」
「……行くぞ、面倒事になる」
男は残った二人の男にそう言って、3人そろってどっかに行く。
なんだったんだよ……、あいつら……。
いや、それより名取が急に来たことに驚いてる。
「……名取さんか。久しぶり」
ちゃんと礼儀正しく挨拶する総一朗。
やっぱ尊敬できる。
そんな総一朗を無視して名取は俺のところまで来る。
険しい表情してる。
またなんか言ってくるのか……。
「……木神天太くん」
相変わらずの呼び方で呼んでくる。
今度はなにするんだ……?
って思ってたら、名取は頭を下げる。
結構深々と下げてる。
「本当に申し訳ごさいませんでした」
……え?
なに? 謝られた?
「調子に乗りすぎました。それで多くの人々を傷つけましたよね」
「えーっと……、急にどうした?」
「言い訳をすると自分しか見えてなかったんです。ただ……、やりたいことをやろうとした……」
んー、今日重い話ばっかなのは気のせい?
「謝っても許されないことは承知の上で伝えたいことがあります。天太くんを含め、色々な人に迷惑をかけて本当に申し訳ございませんでした」
また謝る名取。
うーん……。
「……どうすんだ? 天太」
え、俺の判断?
こういう判断するのあんまり得意じゃないんだよな……。
ってか、マジで急にどうした? 名取のやつ。
「本気でそう思ってるか?」
「はい」
「じゃ、許す」
「えぇ!?」
隣で変な声で驚いてる総一朗。
今の録音して寝る前にもう1回聞きたいわ。
「天太! お前許すの!?」
いや、だってお前が判断を俺に任せたんじゃねぇかよ。
「だって謝ってるんだし。それに、『調子乗ってた』って理由は俺もよくわかる。だから許した」
「ええ……」
そんな感じに言うなよ、俺がなんか悪いみたいになってんじゃん。
それに名取に色々と言ってもなんも起こらない。
名取も反省してるみたいだし、俺があーだこーだ言ったら逆に名取が傷つく。
それに名取、今湊亜のことを助けてくれた……、多分。
「――昔から変わってねぇな」
後ろから声がする。
柚斗だ。
「真央、よく謝れたな」
「……私が悪いから……」
「お前の悪い癖だよな。自分しか見えなかった、そして目的しか見えてなかった」
んー、ちょっと待って。
なんか今日色々と起こりすぎ。
頭整理させて。
「悪いって思ってんならこいつらになんかしてやるよな?」
「……そのつもり……、だけど……」
「だったらちょうどいいじゃねぇかよ。夜泉をまもってやれ」
湊亜?
隣にいる湊亜を見る。
今気づいた。
湊亜は両膝を床につけてて、声には出してないけど泣いていた。