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第145話 演劇 〜8〜

 「どう? 幽霊いた?」


 湊亜が言う。

 アドリブアドリブ……。


 「い、いたぞー!」


 よし、完璧な演技力。


 「そっか。武器はまだ大丈夫そう?」

 「あ、ああ!」

 「これあったんだ。使ってみて」


 今気づいたけど、湊亜がショットガンを背中にかけてる。

 あれ結構重かったんだよね……。


 湊亜は俺に近づいてきてそれを渡す。

 うん、重い。


 「これで少しは楽になると思うから頑張――」

 「見つけたぞ! 木神天太!」


 聞きたくない声が聞こえてくる。

 ステージにモヒカンが立ってた。


 なんでこんなすぐ戻ってくるんだよ……。


 「今度こそ追い詰めてやる!」


 まったく、また逃げなきゃいけないのか……。

 ……いや、待てよ?

 これは上手く使えるんじゃやないか?


 こっからいい感じにアドリブをすればいける。


 「……! スパくん、逃げて! さすがにあいつはヤバい!」


 冷や汗を流してる湊亜。

 演技でここまでできるんだ……。


 「あいつはこの学校のボスみたいなやつなの! 人間が勝てるわけない!」

 「……いや、逃げない!」

 「逃げて!」

 「じゃあアカネ、お前はどうなるんだ!」

 「私はいいの! 早く逃げて!」


 おー、今なんかいい感じじゃない?

 結構クライマックスっぽい。


 もう1回言うけど、これアドリブだからね?

 台本になかったからね?


 「おいおい、なにイチャイチャしてんだよ! このリア充が! 木神天太、お前はいいよな! 顔がよくて! 俺だって必死に努力したんだよ! 顔はよくないし、頭もあんまりよくない! 特別得意なことなんてないんだ! だから俺は努力した! 髪型も目立つようにした! 主人公になりたかった! なのにお前はなんの努力もなしに、顔がいいからっていう生まれつきの理由で!」


 ええ……。

 ちょっと重すぎるんだけど……。


 これマジで思ってるやつだよね? あのモヒカンが。

 なんか申し訳ないな……。


 「俺の努力なめるなよ!」


 モヒカンが向かってくる。

 さてと、どうしよっかな……。


 撃っちゃっていいかな……?


 「お前なんか――」

 「違う!」


 誰かの声が聞こえる。

 総一朗がステージに出てきてた。


 「お前が主人公になりたい気持ちはわかる。俺だってなりたかった。天太が憎いよな、それもわかる」


 え……? 憎いの……?


 「だけどお前は今のセリフで主人公にはなれなくなった。『天太が努力してない』だと? 天太のことなんも知らねぇくせにそんなこと言ってんじゃねぇよ」

 「だって本当じゃねぇか!」

 「天太は努力してる。お前らは知らないと思うけどな、一人でずっと抱え込んで、そのくせ他人の相談は乗る。そんな天太を知ってるか? っていうか、そもそも天太のことを知ろうとしてんのか? 知ろうともしないで天太をバカにすんな! お前のさっきのセリフは、完全に自我をなくしたモブAとか悪役なんだよ!」


 ……総一朗……。

 めっちゃいいこと言ってくれてる……。


 でもごめん。

 急すぎる展開で頭が追いつかない。


 俺は今なにすればいいの?

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