第144話 演劇 〜7〜
休憩室まで来たのはいいけど、これからどうなるかが心配すぎる。
それと総一朗だ。
重要人物は俺と湊亜、それから柚斗とモヒカンだけだ。
それなのにあんな『ザ・重要人物』みたいなセリフ言って……。
これから全部アドリブで行くしかないか。
「木神くーん……」
うちのクラスの女子が入ってくる。
さっきとは違うやつだ。
「なんかめちゃくちゃになっちゃってるんだけど……、これからアドリブできる?」
「まぁ、なんとかやってみる。で、モヒカンは?」
「今木神くんさがしてる。多分殺されるよ?」
「知ってる。演劇とか関係なしに殺しに来てたもん、さっき」
「とりあえず……、ジュース飲む?」
「あー、もらえるなら頂きた――」
「天太!」
喋ってる最中に総一朗が部屋に入ってくる。
「いつでも出れるように舞台裏に来てくれ! モヒカンなら追いやったから!」
「おお、あいつを追いやることってできるんだ。それよりなんで俺がいつでも出れるようにしなきゃいけないんだ?」
「もうごちゃごちゃなんだよ! だからこっから全部アドリブ! わかったら早く行くぞ!」
総一朗が俺の手を握って走り出す。
喉かわいたんだけど……。
しばらく走ってたら舞台裏まで来た。
ステージでは今湊亜がなんか喋ってる。
確かに台本になかったこと言ってる。
「タイミング見計らって出て」
「んなこと言われてもな……。そういうのあんま得意じゃないんだよ……」
「それでもやるしかないんだよ。頑張れ」
「そういえばお前は何役なんだ?」
「幽霊G」
「え、ゴキブリ?」
「違う。7番目のやつってこと。モブで『生徒A』とかあるだろ」
「ええ……。演劇部のお前がそんな役でいいの?」
「フッフッフッ……、甘いぞ、天太」
は? なに言ってんの?
あと活字をそのまま読んでるように言うのやめて?
『フッフッフッ』ってもっと演技込めて言おうよ。
これも『ザ・活字』だったし。
「俺はな、気づいたんだ。こういうのは主役とかじゃなくて陰で支えてるやつが1番かっこいいんだ! そしてそういうやつがアニメとか漫画の主役になるんだ!」
「はいはい、そうですか。好きなふうにしてください」
「残念だったな、天太。こういう演劇で主役になるのはだいたい悪役なんだ。お前もとうとう悪役の時代だ!」
「なんかお前と話してるの嫌だからステージ出るわ」
湊亜もなんか『あ、スパくん』って言ってたし。
頑張ってステージに出る。
出たのはいいけど、なんの話題かはわからない。
ただ俺の名前が聞こえたから出ただけだ。
ま、湊亜と一緒だったらなんとかなるだろ。