第143話 演劇 〜6〜
殴りかかってくるモヒカン。
どうしよう……、アドリブとして演劇を続けるしかない……。
……そうだ、いいこと思いついた。
とりあえずここでモヒカンを撃てばいいんだ。
そしたらモヒカンは死ぬ。
それで演劇は続けられる――
――って、結構ヤバいこと思いついてんな……。
『人が死ねば演劇できる』ってひどい発想だな。
でも仕方ない。
脚を撃てば大丈夫だ、死にはしない。
俺は銃でモヒカンの右脚を狙った。
そして撃つ。
相変わらず振動と音がすごい。
……あれ? 『振動』じゃなくて『反動』だっけ?
そんなことを考えてたらモヒカンが倒れ――
――? 倒れない。
ぴんぴんしてる。
なんで?
俺外した?
「やーい、きがあまのバーカ! そんなの偽物に決まってんだろ! 演劇で本物の銃使うわけねぇだろ!」
「え、これ偽物なの!?」
「そうだよ!」
「でもさっきこれで撃たれた人死んだよ!? それはどう説明するの!?」
「……確かに! それ本物じゃん! なんで!?」
いやいやこっちが訊きたいよ!
マジでどうなってんの?
「でも絶対に息の根を止めてやる! お前はこういう目立ったところが死ぬ場所だ!」
「それだけは絶対に嫌だ!」
マジでどうしよう……、この状況……。
アドリブでこっからどうやって繋げるか思いつかない。
誰か助けてくれれば――
「鼻からスパゲッティ! こっちだ!」
聞き覚えのある声が……!
って、この声総一朗じゃん。
声が聞こえた方向を見る。
総一朗がいた。
総一朗は……、何役なんだ?
それによって次の俺のセリフが変わる。
「はぁ? なんで江島がここで出てくるんだよ! お前は幽霊役だろ!」
「能力だ! 鼻からスパゲッティ、聞くんじゃない! 最後まで聞いたら死ぬぞ! お前を惑わせてるんだ!」
……なるほど、上手い。
さすが演劇部。
たまにはやるじゃん。
「鼻からスパゲッティ! こっちに来い!」
「わ、わかった!」
モヒカンから逃げながら総一朗のところまで行く。
そして舞台裏に逃げた。
「早く休憩室。お前がさっき行った場所」
小声で言う総一朗。
モヒカンもそろそろ舞台裏に来そう。
俺はモヒカンから頑張って逃げて、さっき俺が行った部屋に行った。
サイダー飲んだところ。
テキトーに走ってたらなんかここに来れた。
モヒカンがここに来る気配はない。
……助かった……。
って、なんなんだよあいつ。
めちゃくちゃじゃねぇか。
こっからどうすればいいんだろう……。