第140話 演劇 〜3〜
またステージに出る。
もう湊亜の柚斗がいた。
小道具とかも靴箱になって、ここが昇降口って伝えてる。
でも今はみんな俺じゃなくて湊亜と柚斗に注目してる。
この時間が1番楽だ。
「……確かに開かないね」
湊亜が言う。
やっぱ声通るな……。
さすが演劇部。
同じ演劇部でも総一朗が真面目に演劇してるところは想像できないけど。
「スパくん、ちょっと撃って壊してみてくれない?」
「わ、わかった」
また撃つのか……。
あれ反動も結構すごいから嫌なんだよね。
……いや、撃つんだっけ?
確か撃たなかった気がする。
俺が湊亜に近づいたタイミングで上から瓦礫が降ってくるんだ。
それで俺は一人になって行動する。
撃たなくてよかった……。
湊亜のところまで歩くか――
「――スパくん危ない!」
? 湊亜?
もう言うの?
そのセリフは瓦礫が落ちてくる直前に言うんじゃないの?
そう思ってたら、上から『ガコン!』って変な音する。
……これって、今から落ちてくるやつ?
上を見る。
上に瓦礫があった。
間違いない、落ちてくる。
……? なんかリアルじゃない?
どうせ発泡スチロールだろうけど、リアルすぎる。
……いや、これ本物!?
俺死ぬぞ!
落ちてくる瓦礫を俺は必死に避ける。
もう演劇とかじゃなくてマジで避けた。
瓦礫がステージに当たると、めっちゃ大きい音が響いた。
マジのやつじゃん……。
俺危うく死ぬところだっぞ。
瓦礫はきれいに俺と湊亜たちをわけてて、湊亜の姿も見えない。
でも怖かった……。
俺の死に場所ここになるとこだった。
こんな目立った場所で死にたくないっつ―の。
「――お、今ので死ななかったんだ」
後ろから聞こえる声。
ここで確か幽霊のボスが来るはず。
そこでそいつと戦うんだよね、ここで。
しかもバールで。
振り返って、誰がその役になったか見る。
……モヒカンのやつだ……。
髪型もちゃんとモヒカンにしてる。
「なかなかやるじゃん」
俺は後退りしながらそいつを見る。
いや、見ながら後退りしたのか。
「…………」
黙るモヒカン。
次はこいつのセリフで、その次に俺が言うんだ。
だからこいつが言うまで待つしかない。
「…………」
なんでまだ黙ってる?
次のセリフキミだよ?
「…………」
……待って、嫌な予感してきた。
こいつセリフ忘れやがってる……。
「……き、木神天太! 俺はお前を倒す!」
いやいやいやいや!
ここでその名前出さないで!
今の俺の名前は『牛乳を口で飲み、鼻からスパゲッティ』だから!
「お前、体育祭のとき俺が気になってる女子と手繋いだだろ!」
「い、いや知らねぇよ! ってか、ちゃんとセリフ言いやがれ!」
「聞いたぞ! 『コイラの法則』!」
「え、あいつなの!? お前が気になってるやつ!」
「かーくごー!」
ちょっ、これ絶対にヤバいよ!




