第137話 演劇まであとちょっと
俺たちの演劇が始まる10分前になった。
衣装に着替たり小道具持つ人は小道具持ったりしてる。
俺はもう衣装を来たから教室で待機してる。
緊張するな……。
「天太くん、準備できた?」
赤色のパーカーと白色のスカート着てる湊亜がこっちに来る。
「ああ」
「じゃ、移動するよ」
湊亜は俺の手を握って歩き出す。
どこに行くの……?
黙って湊亜について行ったら地下体育館まで連れて行かれた。
めちゃくちゃ人がいる。
「こんなにお客さんいるね。頑張ろっか!」
「こんないるの……?」
「うん、大丈夫だよ。お客さんのこと見なければ、お客さんの存在忘れるから!」
そうなのかな……?
ま、多分大丈夫だ。
湊亜が俺に教えてくれたんだ。
だから絶対に失敗しちゃいけない。
「私たちはこっちから行くよ」
湊亜はまた俺の手を取ってどこか向かう。
なんか『秘密の通路』って感じのところ歩いてる。
薄暗い。
こういうところ好きなんだよね。
静かで暗くてちょっと冷たい感じの空気。
「――ここだよ」
湊亜は止まる。
……ここどこ?
「ステージ裏だよ。すぐそこにステージがあるの」
へー。
そう思ってカーテンを少しめくってみたら、確かにすぐ隣にステージがある。
そして照明が眩しい。
俺ここで演技するの……?
「こういうところ、初めて?」
「ああ」
「なんかすごいでしょ」
「うん、なんかすごい」
「きっとみんな来てるから頑張らなきゃね」
そっか、みんな来てるのか。
めっちゃ緊張すんじゃん。
「天太くんって演劇は初めてだっけ?」
「そう……、だな……。うん、初めて」
「楽しいよ」
「そう思えるように頑張ります」
「……そろそろ始まるね」
え、もう?
待って、さすがに心の準備ができてない。
なんか体育館の中に放送が響く。
音響すごすぎて全然聞き取れない。
声が聞こえなくなると、体育館の照明が消えた。
ステージだけ照明がついてる。
うわ、これマジで無理かも。
「大丈夫そう?」
「いや、無理かも」
「大丈夫だよ。真っ暗でお客さんの顔なんて見えないから」
それもそっか。
それなら緊張――
じゃないよ。
そこじゃない。
俺はみんなに注目されまくるから嫌なんだよ。
こんなのステージ以外に目を向ける人なんかいないじゃん、絶対。
でも俺がそんなこと言っちゃダメだ。
なにがなんでも成功させてやる。
「じゃ、頑張って」
「ああ」
湊亜の声を聞きながら俺はステージに出る。
……やっぱ無理かも。
作者が体調不良のため、しばらく投稿できません。本当に申し訳ありません。