第136話 証言 〜終〜
「キョウコ、お前は嘘をついてるか?」
「いいえ、ついてませんよ?」
「じゃあついでにカズキにも質問。翔琉と会う前、どこにいた?」
「家ですけど……」
「へー、家にいたのにわざわざコンビニで買ってきたんだ」
……なんかこういうセリフ言ってみたかったんだよね。
アニメとかでしか出てこなさそうなセリフ。
「まぁ、コンビニに行きたかったので」
「なんで?」
「べ、別にいいじゃないですか、理由はなんでも」
「じゃあ次の質問。深夜1時にコンビニにいたんだろ? 深夜1時、その時間帯なのに一人でそんなとこ行ったのか?」
「それは翔琉も同じじゃないですか?」
……あ、本当だ。
でも未成年がそんな時間に一人で外出していいんだっけ?
「じゃあまたまた質問。キョウコは家でなにしてたんだ?」
「音楽聴いてました」
「学校に行ったりしてなかったのか?」
「行ってるわけないじゃないですか……」
「そうか? 俺の仮説じゃ、お前は学校に行ってたと思うんだけど」
俺がそう言うと、みんなの動きが止まった。
「あとカズキもいたんじゃないか?」
「え……」
「俺の仮説じゃ、キョウコとカズキが学校にいた。それで窃盗をした。帰る途中、カズキは翔琉に、キョウコは言音に誘われた。ちょうどいいアリバイができたんだな。で、その誘いを受け入れた。ま、証拠はないからなんも――」
「正解です! さすが木神先輩!」
俺の声を遮る言音。
正解……?
「いやー、すごいですねー! 早すぎますよ!」
「いや、あれ仮説だったんだけど……」
「すごすぎますよ!」
え、マジ?
俺の仮説合ってたの?
そんなことある?
「すごいね、天太くん」
「いや、偶然――」
「天太ばっか……」
「ええ……」
え、なに、これもう終わり?
なんかごめん。
「木神先輩、演劇、絶対に見に行きますからね!」
「来なくていいよ」
「なんでそんなひどいこと!? 木神先輩の主人公姿見たいですよ!」
それを見られたくないんだよ。
言音たちに礼を言ってから教室から出た。
「すごいね天太くん。あんな一瞬でわかるなんね」
「いや、あれ偶然なんだけど……」
「天太、お前ってあんな頭良かったっけ?」
「失礼だな」
「それに、言音ちゃんも楽しみって言ってたね、演劇」
それなんだよな……。
もう緊張しすぎて吐き気する。
プレッシャーすごいだろうな……。
姉ちゃんも来るって言ってたし。