第130話 咲羅と対面
もらった懐中電灯で前を照らしながら進む。
総一朗が怖いから、湊亜の手は握ったままにしてる。
前にはダンボールでつくられたであろう公衆電話がある。
あそこに行くのかな?
そう思ってたら、急に『パン!』って破裂音が聞こえる。
風船を割った音みたい。
……本当に申し訳ないけど、あんまりびっくりしなかった。
湊亜も総一朗もあんまりびっくりしてないみたい。
これは……、スルーしたほうがいいのかな?
うん、そうしよう。
歩いてたら、今度は電話の着信音みたいな音が聞こえる。
あの公衆電話のところまで行けばいいのかな?
そこまで歩く。
「総一朗、受話器取るか?」
「嫌だよ、怖い」
「じゃあ湊亜、取るか?」
「ちょっと怖い……、天太くんお願いできる?」
「俺でいいのか? じゃ、遠慮なく」
受話器を取って耳に当てる。
すると、『3……、2……』って教室に響く。
受話器からはその音は出てない。
多分、どっかにスピーカーがあって、そっから音出してるんだと思う。
『1……』
そろそろカウントダウン終わる。
なんか来そうだな……。
『0!』
そう聞こえたと同時に、カーテンの裏から誰かが出てきて『うわー!』って叫ぶ。
絵の具で色々汚してある仮面被ってる
ゾンビの仮面かな?
でも、それより気になることがある。
この髪型……、あの声……、身長も同じくらいだ。
うん、間違いない、咲羅だ。
「咲羅さんじゃん」
「本当だ、白糸さんだ」
湊亜も総一朗も驚いてないみたい。
「白糸さん、お化け役だったんだ」
「咲羅さんも大変だね」
確かに大変そう。
だって今までずっとカーテンの裏側で待ってたんでしょ?
「咲羅……、とりあえず、お疲れ――」
「ねぇ!」
咲羅が叫ぶ。
どうしたんだろう……。
「今私、係としてやってんだよ!? アルバイトみたいなもんだよ!? そういう人にこういうとき個人的なこと話しちゃダメでしょ!?」
ええ……、そんな怒る……?
まぁ、確かに俺たちが悪いか。
「それより、天太! もっとびっくりしてよ! 私ずっと暗い中待ってたんだよ!?」
「だって別に驚くほど――」
「そういうのは嘘でも演技――って、言いたいけど、やっぱいっか。天太の演技で驚かれると逆に傷つく」
なんで?
俺の演技は完璧だぞ?
「いい? お化け屋敷は叫ぶとこ! 怖くなくても怖がらなきゃいけないの!」
「ご、ごめん……。俺、あんま人と話してなかったから、そういう常識なくて……」
「べ、別にそこまで言ってないけど……。とにかく! 次はびっくりしてよね!」
咲羅はそう言ってカーテンの裏側に戻る。
「……咲羅さんって、お前に怒るんだな」
「ね。木神くんには怒らないってイメージあったけど……」
「まぁ、悪いの俺だし。じゃ、行こっか」
そう言って歩く。
それからもたくさん驚かせてくれた。
最終的には、ちゃんと出れた。
でも、1番驚いたのは、咲羅が急に叫んだところだな……。