第122話 父さんとちゃんと食事
「天太ー、文化祭のことでなんか決めた?」
部屋にいると、姉ちゃんがいきなり入ってきた。
だからノックくらいしろって……。
「そろそろ天太んとこ文化祭でしょ? 天太なにやるの?」
「演劇」
「……天太、かわいそうだね」
いや、なんで?
俺めちゃくちゃ演技上手いぞ?
「ま、天太がやれば面白くはなるか、ギャグのほうで。なんの演劇やるの?」
「それはまだわからない――って、なんか失礼だな」
「だって本当のことだもん。それよりご飯、できたよ」
「? 母さん今家にいないよな? 父さんが夕飯つくったのか?」
「……天太、私が料理できるってこと覚えてる?」
え、そうだったっけ?
……そんなこと前に言ってた気がする。
そういえば母さんってどこに行ってんの?
いつも家にいるのに。
とりあえず食べるか、考えても仕方ないし。
……父さんとの食事、ちゃんと楽しめた。
今日の父さんは酔ってない。
色々父さんに学校の状況訊かれて、それについて盛り上がってた。
父さんが一番びっくりしてたのは、学校でも俺は家の態度をとっているってこと。
父さんは俺が嫌われ者ってことを知ってたし、学校での俺の存在も知ってた。
だけど父さんは止めようとしないで、『お前がそうしたいならそうしろ。それが本当のお前だったらな』っていう名言を放ってくれた。
あれは『本当の俺』じゃなかったけどな……。
「……そうだ、遥海、酒飲んでみるか? もう二十歳だろ?」
「いや、いい」
「なんで?」
「酔いたくないから」
「今の時代、酒飲めないとキツイぞ? 付き合いも悪くなるし」
「いや、逆に今の時代お酒飲めない人いっぱいいるよ」
へー、そうなんだ。
じゃあ俺も飲めなくていっか。
自分の部屋に行こうとしたとき、ポケットに入れてあるスマホが震えた。
誰かからメールが来た。
……総一朗……。
『演劇、怪談だって』
……いや、意味わかんねぇよ。
なんだよ、『怪談』って。
『怪談ってどういうこと?』
『お化けのやつ』
『そういうのじゃなくて、どういう事するの?』
『わかんね。ストーリー構成は文芸部がやるって』
……うちのクラス、文芸部のやつなんていたっけ?
よし、なんかやり取り終わった感じだし、自分の部屋行こ。
そう思ってたら、またスマホが震える。
今度なんだよ……。
……湊亜からだ……。
『あのさ、文化祭、一緒にまわろ?』
うん、そのつもりだったよ。
『そのつもりだった』
『ありがとう。また会うわけないってのはわかってるんだけどね、ちょっと怖くて……』
んー、なんか意味深な言葉。
どういうこと?
……推測なんてしなくていっか。
変に考えると湊亜に悪いし。
今回の名言……『ま、天太がやれば面白くはなるか、ギャグのほうで』