第12話 怪我したまま家に帰った
「おかえり――って、ええ!?」
家に入った瞬間、姉ちゃんが俺の腕を凝視する。
俺の腕からは血がポタポタと垂れている。
「あ、ただいま」
「ちょっ、どうしたの、その腕! 結構血出てるよ!」
見ればわかるよ……。
「何か事故でも起こった!?」
「いや、まぁ……、階段から落ちた」
「そんなわけないじゃん! 階段から落ちてなんでそんな切り傷ができるの!?」
あ、バレた。
でも本当のこと言うわけにもいかないし……。
結局あのあと――
「あのー……大丈夫?」
誰だ……、こいつ……。
見たことねぇやつだな……。
「左腕……いっぱい血出てるよ」
見なくてもわかる!
めっちゃ痛いんだよ!
「保健室……、連れて行こっか……?」
「え……」
「え、……だから……、保健室……」
保健室か……。
あそこにはもう行きたくないな……。
「だ、大丈夫……」
「そっか……、じゃあ家まで送っていくよ」
あ、家までついてくるの?
変なことにされないかな……?
……でも……。
こいつはなんか違う……。
あの女子生徒たちっぽくない……。
白糸咲羅っぽい……。
「とりあえず包帯巻くから! 早く消毒!」
姉ちゃんはそう言ってどこかへ走っていった。
そんなに心配するか……?
まぁ弟が腕から血流してたら心配するか。
姉ちゃんには嫌われてなくてよかった……。
すると、俺のスマホが震える。
白糸咲羅から電話がきていた。
どうしたんだろう……。
「……どうした?」
『いや、大丈夫かなって……』
何に心配してるんだ……?
俺が怪我してること、白糸咲羅は知らないよな……?
「……何に心配してるんだ?」
『今日呼び出されてたじゃん……』
あ、そのことに心配してくれるんだ。
普通に嬉しいけど。
「俺は大丈夫だ。そっちは?」
『私は別に……』
いやいや、何その言い方!
絶対何かあったじゃん!
『ただ、ちょっと悩みがあるだけ』
「悩み?」
『うん。木神に名前で呼ばれたことないよね、私』
……はい?
『だから、名前で呼んでほしいな』
それって恋人とかが言うやつだよね!
『私のこと名前で呼んで!』って!
「……わかった、じゃあ白糸って呼ぶな」
『私にもちゃんと咲羅って名前があるんだけど』
あー、これ面倒くさいやつだ。
「はいはい。じゃあ咲羅って呼びますよ」
『うん。バイバイ』
咲羅はそう言って電話を切った。
……それだけを言いたかったのか……。
そのあと、俺は消毒をして包帯を巻いてもらった。
そして一つだけ思ったことがある。
消毒液がめっちゃしみる!