第114話 みんな、頼む
「――ってわけで、頼む、みんな」
俺はみんなに頭を下げた。
「木神くんにひどいことするなんて許せない!」
最初に喋ったのは俺によく絡んでくる女子生徒。
「確かにあいつはこういうの弱いからな。全員が自分の味方だと思ってるし。でも逆にいじめだと思われるぞ?」
柚斗が微笑みながら言う。
「いじめ、ね……。ま、確かにそうなるな。そのへんは俺がなんとかする」
「いやいや、天太だけのせいにはしない。みんな停学になったら、みんなで遊ぼう」
「そうですよ! みんなで怒られれば怖くありません!」
咲羅と実璃も言う。
俺は頭を上げた。
湊亜はあんまり気が乗ってないみたいだ。
……ま、そりゃそうだよな。
「じゃ、行ってくる――」
「なに? こんなところで」
昼休み、1階にある視聴覚室。
この教室の中には俺と名取しかいない。
「言いたいことがある」
「付き合ってくれるの?」
「どっちだと思う?」
「その表情、違う感じだね」
「……最終確認したい。もし付き合わなかったらどうする?」
ここが大事だ。
ここで全部喋らせてやる……。
「言ったでしょ? 例のことを広める」
「例のこと、か……。具体的に言うとどんなことだ?」
「…………」
黙る名取。
不審に思われてるのかな……?
なるべくそうはさせたくない。
「言ったろ? 『最終確認』って。ちゃんと言ってくれ。それで覚悟ができるから」
「……そっか、そうだよね。ちゃんと言ったほうが覚悟できるんだね」
名取は深呼吸する。
これはいけそうだ……。
「あなたがいじめをしたことを広めます」
……よし、できた。
残念だったな、名取。
お前の一瞬の油断のおかげで、俺は勝てた。
さ、みんな、やってくれ――
「うっわ……」
窓から声がする。
名取が驚きた表情を浮かべて、窓を見た。
窓が少しだけ開いてた。
そして、数人の女子生徒たちが名取と俺にスマホを向けている。
動画を撮ってる、もしくは写真を撮ってくれてる。
「真央ちゃん、そういうことするんだ……」
演技力で言う女子生徒。
まるで『本当にひどいことしてるところを見てる』って感じだな。
演技上手い。
ま、俺ほどではないけど。
俺のほうが演技上手いからね?
「え……」
「最低だね、そうやって人の弱み握るなんて」
「は、はぁ……? 最低なのは……、この人ですよ……? 昔いじめ――」
「だからなんだよ」
教室のドアが開く。
柚斗たちが入ってきた。
みんないる。
「仮に本当にこいつがいじめしたとしても、だからってそうやって弱み握っていいのか?」
「……柚斗は……、黙ってて……」
名取は顔は笑ってるけど、声は震えてる。
……なるほどね、こいつ、多くの人にこうやって責められるのが苦手なのか。
「ちょっと先生に見せてくる!」
外にいる女子生徒が走り去る。
「やめなさい!」
名取が叫ぶ。
でも、女子生徒は止まるわけがない。
意外と簡単に終わりそうだ。
そんなことを思いながら名取を見てると、名取は突然走り出す。
そして教室から出た。
「あ、待て!」
柚斗が追いかける。
言音はそんな柚斗を目を細くして見てた。
名取が柚斗から逃げられるとは思えない。
つまり、もう名取は終わった。
……こんな簡単に終わるなんて思ってなかった。
そっか……、最初からみんな頼ればよかったんだ……。
初めて前書きを有効に活用できた気がする……。
それと、作者の期末テストが無事(?)終わりました!
1週間ちょっとかな? その間ありがとうございました!