第110話 湊亜に相談
「えっと……、なに……、かな……?」
屋上。
俺は今そこで湊亜と二人きりだ。
「来てくれてありがとな、湊亜」
「う、うん……」
「ちょっと相談したいことがあるんだ」
「な、なにかな……?」
なんか湊亜の声が小さい。
なんでだろう……。
「名取って覚えてるか?」
「え、あ、うん……。覚えてるよ……?」
「そのことなんだけど、いいか?」
「うん、いいよ」
急にハキハキ喋る湊亜。
なんで急に……?
いや、今は湊亜のことを考える時間はない。
さっさと言いたいことを言わなきゃ。
「俺さ、昔ちょっとやらかしたんだよね。マジで最低なことしたんだ」
「そう……、なんだ……」
「それでさ、名取が言ったんだよ。『付き合わなかったらそのことを広める』って」
「まぁ、そっか。そういうことする人だって、色々聞いてる」
多分咲羅から聞いたのかな?
「白糸さん、結構その名取さんのこと悪く言ってたけど……、それって本当のことだったんだね」
「まぁ、咲羅が悪く言うのもわかる。それで、俺はどうすればいいと思う?」
「うーん……」
湊亜は人差し指を自分の顎につける。
考えてくれてるみたいだ。
「私的にはさ、別に放っといていいと思うな。天太くん、結構人気者でしょ? でも名取さんはその噂があるくらい悪く言われてる人なんだよね。じゃあその人が噂流したところで、信じてもらえないと思うんだよね」
……つまり、湊亜は名取があんまり信頼されてないって思ってるのかな?
残念なことを伝えてやるか……。
「ごめんな、湊亜。あいつは結構人気らしい。しかも異性に」
「そうは見えなかったけど……」
「合計100人に告白されたらしいぞ」
「それ本当? 数が多すぎると思うんだけど」
「それはわかないな」
「でも、天太くんなら大丈夫だと思うよ? 例え噂を流されたとしても、天太くんの味方はたくさんいると思う。少なくとも私は味方のつもりだよ?」
湊亜はニッコリと笑う。
なんかこの笑み見せられるとつらいな……。
多分、湊亜はいじめを絶対に許さない人だ。
それなのに、目の前には過去にいじめをしたやつがいる。
そんなやつが存在なんてしていいのな……?
「わかった、ありがとな。助かった」
「力になれたら嬉しいよ。じゃ、教室まで一緒に行こ」
湊亜は俺にさらに近づく。
とりあえず、湊亜は『気にする必要はない』ってことか。
これも考えに入れとくか。