第108話 隠し事
「――ってな感じ」
次の日、俺は実璃と二人で登校してる。
そのときに俺は昨日のことを話した。
名取がなんか捨て身戦法みたいなやつ使ってるってこと。
「まぁ、名取ならそういうこと考えててもおかしくありませんよね。自分が捕まったら元も子もないのに」
「本当そうだよな」
「つまりこちらから脅すのは無理と――」
「へー、そういうこと」
後ろから急に聞こえてくる咲羅の声。
俺は普通に振り向く。
でも実璃は『うわあぁぁぁ!』って叫んでる。
めっちゃびっくりしたのかな?
予想通り、咲羅がいた。
「よ、よう、咲羅――」
「最近二人でいるからおかしいと思ったんだよ。そういうこと考えてたんだ」
「べ、別に考えるのは自由だと思うけど……」
「そういう問題じゃない」
咲羅は無表情のまま俺に近づいてくる。
そして人差し指を俺の胸に当てた。
……いや、怒ってる?
怒ってるって表情?
「私には隠してたんだ」
「そういうわけじゃ――」
「この前実璃が無理に話題ずらしてたけど、それってこれだったんだ」
……なんか咲羅怒らせちゃったみたい……。
どうしよう……、これじゃ嫌われる……。
「あ、天太さんは――」
「実璃はなんも言わないで」
実璃の声を遮る咲羅。
これマジで怒ってるわ……。
「私は天太に相談した。そのおかげで私は助かった。それなのに天太は私に相談してくれなかった」
んなこと言われても……。
相談したら巻き込んじまうし……。
ずっと黙っててもなんか言われるばっかだし、ちゃんと言おう。
そうすれば咲羅も納得してくれるかもしれない。
「咲羅……、お前を巻き込みたくなかったんだ……。これで納得――」
「するわけないじゃん」
あれー?
おかしいな。
なんで納得しない?
「『私を巻き込むから』? だいたい、巻き込まれるのが嫌だったら天太と関わってないし」
あー、そうだったんですか……。
「隠し事をするっていう行動が『本当の天太』を表現してるなら別に止めない。でも、それは『本当の天太』じゃないでしょ?」
「……よくわかってるな」
「これでも天太のことは少しは理解してるつもり。すっごく優しいことも、誰よりもかっこいいところも、本当は演技力がないのも知ってる」
咲羅……。
一つ間違いがある……。
俺は演技力あるぞ?
「別に天太の相談を笑ったり、変なふうに思わない。だから正直に話してほしいだけなの。私が天太にしたみたいに」
……そっか。
そうだよな。
俺は一応咲羅の相談に乗った。
俺も咲羅に相談しなきゃ、割に合わねぇよな……。
「……ありがとう、咲羅。じゃあ、相談させてもらうぞ」
「うん!」
咲羅は今度は笑顔になって言った。