第100話 これからも一緒にいてください!
「……集まってくれてありがとう」
とりあえず礼を言う。
俺は今とある公園にいる。
そして俺の前には総一朗、咲羅、実璃、言音、湊亜がいる。
その5人は並んでいて、それに向かい合う感じで俺が立っている。
今は午前10時。
公園にはたくさん子供が遊んでいた。
みんな暗い顔してる。
みんなあの件ってことはわかってると思う。
「……アイドルのことなんだけどさ……」
俺が喋ってもみんななにも言わない。
まだ暗い顔してる。
「……俺さ、考えたんだ。ずっと考えて、直前まで考えた。それで……、なんか……、覚悟が決まってたみたい……」
曖昧なのは、俺の身体が勝手に動いたから。
頭の中では全然考えてなかったことが起こってたことだから。
「みんなは……、俺と気軽に関わり合ってくれた。他のみんなとは違う感じに。それが……、俺は嬉しかった――」
「――つまり?」
俺の声を遮って咲羅が言う。
「天太はなにを伝えたいの?」
「……俺は……、みんなと……一緒にいたい……」
そう言うと、俺の頭の中に自分のことが映画みたいに流れる。
小学生のときは普通だった。
自分を変えたいと思ったのは中学生から。
一時的に、『自分はモテるタイプ』と思ってた。
なぜかそのときは顔に自身があった。
今思えば全部間違ってたけど。
調子に乗りすぎた。
そう、言い訳をすると、調子に乗りすぎたんだ。
自分だけを使って周りから笑いを取るのはいいんだ。
なのに俺は、全然関係ないやつまで巻き込んで苦しめた。
そいつの苦しみを味わうために、高校から自分をそいつと同じにしたんだ。
『いじめられる方は悪くない』のに……。
「――天太?」
咲羅の声が聞こえてきた。
現実に戻る。
「あ、ああ……、変なこと考えてた……、悪ぃ……」
「変なこと?」
「みんなには全然関係ねぇことだ。忘れろ」
……変わってる……。
この言い方は今の俺じゃない。
昔の俺だ。
……いや、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。
早く伝えなきゃいけないことを伝えなきゃ……。
「俺……アイドルには……ならねぇ……」
やっと声が出た。
その瞬間、みんな微笑む。
「俺やっぱり、今まででいいや……。もっとみんなと関わり合いたい――」
俺が喋ってる途中だった。
咲羅が抱きついてくる。
それは別に驚かない。
いや、ちょっとは驚いた。
でもそれよりも驚いたことがあった。
咲羅の力が想像以上に強くて苦しい……。
「……天太、言ったね?」
なにその言い方……。
めっちゃ怖いんだけど。
「言ったからには、絶対に破らないでね?」
抱きつかれてたから咲羅の表情はわからなかったけど、なんか声のトーンはいつもより高かった。
「……ああ、だから――」
「――これからも一緒にいてください!」
第100話まで読んでいただき、ありがとうございます!
ここまで長かったですね!
ちょっと振り返りますね。
まず天太の顔と声がバレてモテモテになる。
咲羅と出会う。
実璃と出会う。
名取、登場する。
柚斗、変なことする。
なんか色々ある(体育祭とか)。
咲羅、性格変わる。
言音と出会う。
湊亜と出会う。
なんか色々起こる。
って感じですかね……?(こういうの苦手ですみません)
そして!
第1話の『嫌われ者、木神天太』が投稿されたのは2023年10月8日!
これが投稿されたのは2024年5月29日!
ここまで長く続けられたのも全部読者さんのおかげです!
本当にありがとうございました!
……なんか『これが最終回』みたいな感じになってますけど、まだ続きます。