第10話 倒れた
教室に叫び声が響く。
俺の目の前には白糸咲羅の顔があった。
めっちゃ近い。
そして俺はやっと状況を理解した。
俺が白糸咲羅を押し倒したのだ。
俺は白糸咲羅の顔にぶつかるギリギリで床に手をつけていた。
でも俺と白糸咲羅の身体は結構当たってる。
……結構アウトなやつだ……。
「……あ、悪い!」
俺は立ち上がろうとする。
でも腕が痛くなった。
まだ痛かったんだ……。
俺が初めてみんなに地声聞かれたとき。
俺は変な男子生徒に押された。
そのときに腕を打ったけど……まだ痛みがあった……。
俺はガクッと倒れ、さっきより白糸咲羅の顔と近くなる。
「天太! 大丈夫か!」
総一朗の声がする。
すると、俺の身体が起き上がった。
総一朗が俺を起き上がらせてくれていた。
ってかこれ、絶対なんか言われるやつじゃん……。
『お前! また咲羅さんとイチャイチャしてたな!』みたいな感じで。
顔が怒ってるもん……。
「腕とか痛くねぇか! どっか変な感じとかしねぇか!」
! 総一朗……!
お前……。
……最低だな……俺……。
疑うなんて――
「――それより咲羅さん! 天太に変なことされなかった!? 大丈夫!?」
……俺より白糸咲羅……。
……友達より好みの女……。
まぁ、それが人間か……。
「え、あ、私は大丈夫……」
白糸咲羅が起き上がる。
「木神は大丈夫?」
「あ、ああ……。俺は別に……」
「そうだ! 天太は大丈夫だ!」
総一朗……、お前が言うな……。
「本当に大丈夫……?」
白糸咲羅は心配そうな顔をして俺に訊く。
こっちは優しい……。
「ちょっと咲羅! こっち来てー!」
向こうの方で女子生徒の声がする。
白糸咲羅はその声の方に顔を向け、そのあと俺の顔を見る。
「えっと……」
「? 行ってあげな?」
俺が言うと白糸咲羅は少しだけ笑って、声が聞こえたところに向かった。
「……やっぱりお前、咲羅さんと付き合ってるんだろ?」
唐突に言い出す総一朗。
「は? なんでそんな結論になるんだよ」
「だって! 普通あんな体勢にならないだろ! 完全にアウトな体勢だったぞ、あれ!」
「いや、押されたらああなるだろ、普通」
「このモテ男が!」
総一朗は涙を流しながらどこかに走っていった。
泣くほどなんだ……。
「おい、ブタ」
今度は誰かが俺の肩を後ろから叩く。
まだいるのかよ……、俺のことブタって言うやつ。
振り向くと、俺を押した男子生徒がいた。
その後ろには数人の男子生徒。
「今日放課後、屋上に来い」
そいつはそう言ってどこかへ行った。
屋上に呼び出すやつっているんだ……、アニメとか漫画だけだと思ってた……。