勇者制度(総務大臣アンヌ・ロータス視点1)
~総務大臣アンヌ・ロータス視点1~
ノビス城会議室において、総務大臣アンヌ・ロータスと勇者一行が向いあって座っている。テーブルにはお茶とケーキやクッキーなどのお茶菓子が置かれている。
「リラックスして、説明を聞いていただければと思います。長旅でお疲れでしょうし」
ドワーフの女戦士グりエラは
「酒がよかった・・・」
とぼやき、典型的な酒好きのドワーフであることが見て取れた。
「申し訳ございません。この後の歓迎パーティーで各地の地酒を用意しておりますので、もうしばらくお待ちください。」
これに対して勇者クラシアは
「ちょっとグリエラ!!文句言わないで。大臣こちらこそすいません。」
と応じた。
(こちらの勇者は王女だけあって、しっかりしてるわね)
「それではまず、謁見の際にもノビス王よりありました勇者制度についてご説明させていただきます。勇者制度とは・・・・・」
説明内容はこうである。
ノーザニア王国と隣接する魔国デリライトは互いに長引く戦争で疲弊していた。人族と魔族はともにそれぞれを滅ぼさんとしていたのだが、隣接する二か国はそれどころではなかった。生活が困窮しており、対策が急務であった。
ノーザニアからすれば、勝手にデリライトと和解してしまえば、人族から反感を買い、魔族の手先とされて討伐される可能性もある状況。デリライトも同じような状況であった。そこで、領土を掛けて少数による代理戦争で決着しようという取り決めがなされ、20年ほど前に300年続いた戦争が休戦となったのであった。
具体的には、国境に位置する自治都市クロスポートにおいて、勇者パーティーと魔族チームが決戦を行うというものである。
ここで勇者側が勝利すれば、魔族領に入国してさらに奥地を目指せるようになる。
現在、クロスポートでの決戦に勝利したのは初代勇者パーティのみである。
魔族側が勝利した場合、こちら側に領土を要求することはない。
「領土が増えたら面倒くさい。」
とのことで、勝利した魔族側には金品や物品(主に酒)を渡している。
なお、初代勇者は現ノーザニア王ノビスである。
そんな説明を続けていたところ、会議室の扉が開いた。
入ってきたのはノビス王と宰相ベルク・スターレスである。
入ってくるなり、ノビス王は勇者に
「クラシア!!あのお転婆娘がこんなに立派になるなんて」
と声を掛けた。
勇者クラシアは
「ノビスおじさんやめてくださいよ。おじさんだって勇者だったんでしょ。」
と返した。
「お前の親父レオ(現ラーシア王国国王レオナルド・ラーシア)と一緒に冒険したんだ。なつかしい話だ。ところでレオは元気か?大陸会議も欠席してたが・・・」
「元気ですよ。双子の弟と妹が生まれた関係でそっちにかまいっきりですね。それで、会議も欠席したのだと思います。」
「そうか元気か。お前も気を付けて頑張れよ」
「はい。必ずやご期待に沿えるように」
そんな会話が続いていたところノビス王から
「アンヌ、邪魔してすまんかったな。俺はこれで帰るんで、後は頼んだぞ」
と声を掛けられた。王を見送り、私は気合を入れなおす。
(そう!!ここからが私の重要な仕事・・・)